3行でいうと
- 出力の条項を読めた5社は、いずれも出力は利用者のもの(権利を譲渡する)とする趣旨。多くが「法律が許す範囲で」などの但し書きつき。
- 知的財産の補償は、法人向け・API向けの文書にあり、条件と除外が細かく違う。個人向けの規約には、読んだ範囲で補償が見当たらなかった。
- 出力で競合するAIを作ることの禁止、学習への利用の扱いも会社ごとに違う。契約の話で、著作権で保護されるかは別問題。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、公式の規約や条件のページを読んでまとめたものです。法律・契約の紹介であり、法的助言ではありません。実際の契約の判断は、弁護士などの専門家に相談してください。
先に結論
- 出力の条項を読めた5社(Microsoftを除く)は、出力は利用者に帰属する、または会社が持つ権利を利用者に譲渡する、と書いています。ただし、「法律が許す範囲で」「会社に権利があれば」といった但し書きがあります。
- 知的財産の補償(第三者が「AIの出力が自分の権利を侵害している」と訴えたときに、会社が守る、費用を持つ約束)は、法人向けの文書に書かれていました。個人向けの規約では、読んだ範囲では、会社が利用者を補償する条項は見つかりませんでした。
- 補償には、除外の条件が多く付いています。出力を改変した場合、他の技術と組み合わせた場合、侵害だと知りながら使った場合、商標の問題などです。Microsoftと、Googleの一部は、安全機能を使うことも条件にしています。
- 規約で権利が譲渡されても、その出力が著作権法で保護されるかは別の問題です。この記事では扱いません。
前提:用語
- 出力(Output)は、AIが返した文章や画像などです。入力(Input)は、こちらが渡した内容です。
- 補償(indemnity)は、第三者から権利侵害を理由に訴えられたとき、会社が防御し、判決や和解の費用などを負担する約束です。
- オプトアウトは、「学習に使わないでほしい」と利用者が設定で選ぶことです。
- 競合モデルは、そのAIの出力を使って、同じ種類のAIを作ることを指します。多くの規約で制限されています。
- 規約は、個人向け(チャット画面)と法人・API向けで別の文書です。同じ会社でも中身が違います。
比べる軸と、読んだ文書
| 会社 | 読んだ文書(ページに書かれた日付) |
|---|---|
| Anthropic | Commercial Terms of Service(2025年6月17日施行)、Consumer Terms of Service(2025年10月8日施行) |
| OpenAI | Services Agreement(2026年1月1日施行)、Terms of Use(2026年1月1日施行、EU向けは2026年1月16日更新) |
| Gemini API Additional Terms(2026年3月23日施行)、Google Cloudのサービス固有条件の生成AIの節、補償の対象サービスの一覧(2026年7月20日改訂) | |
| Microsoft | Customer Copyright Commitment(ページ末尾の更新日は2026年3月20日) |
| xAI | Terms of Service - Enterprise(10月8日に読んだ版は2026年8月14日更新で、契約当事者名は「SpaceXAI LLC」。10月23日に2回読んだ版は「Last Updated: May 12, 2026」で、契約当事者名は「X.AI LLC」。どちらが新しい版か確かめられていません) |
| Mistral AI | Commercial Terms of Service(2026年9月25日施行とページに記載) |
規約は更新されます。ここに書くのは、2026年10月8日に読んだ版です。10月23日に読み直せた文書は、上の日付や条項と食い違いがないかを見ました。食い違いが見つかったのはxAIだけで、下の「気をつけること」に書きました。
出力の権利
- Anthropic:法人向けは、利用者が出力を「所有する」と書き、Anthropicが持つ権利(あれば)を譲渡すると書いています(B節)。個人向けも、条件を守ることを前提に、Anthropicが持つ権利(あれば)を譲渡する、と書いています。
- OpenAI:法人向けは、「適用される法律が許す範囲で」利用者が出力を所有し、OpenAIが持つ権利を譲渡する(4.1)。ただし出力は唯一とは限らず、他のユーザーに似た出力が返ることがあり、他のユーザーへの回答は利用者の出力ではない(4.4)。個人向けも同じ趣旨です。
- Google:Gemini APIの追加規約は、「その内容について所有権を主張しない」としつつ、同じ・似た内容を他の人に生成する権利を留保する、と書いています。Google Cloudの条件は、生成された出力は顧客のデータで、Googleは出力に生じた新しい知的財産について所有権を主張しない、と書いています。
- Microsoft:Customer Copyright Commitmentのページは、出力の帰属ではなく、補償の約束を扱う文書です。出力の権利の条項は、読んでいません。
- xAI:法人向けは、利用者が出力を「永続的に所有する」と書き、権利を譲渡します(3.2)。ただし出力は不正確、または唯一でない場合がある、と注意しています。
- Mistral AI:法人向けは、「適用される法律が許す範囲で」利用者が出力を所有し、権利を譲渡する(3.1)。
見立てです。「所有」と書いてあっても、「その出力を他社が使えないか」「著作権で守られるか」は、この条項だけでは決まらないと思います。OpenAI、Google、xAIは、似た出力が他の人に返りうることを自分から書いています。
学習に使われるか
- Anthropic:法人向けは「Servicesの顧客コンテンツでモデルを訓練してはならない」(B節)。個人向けは、設定でオプトアウトしない限り、モデルの訓練に使うことがある。オプトアウトしても、フィードバックを送った場合や、安全上の確認の対象にされた場合は使われる(個人向けの4節)。
- OpenAI:法人向けは、利用者が明示的に同意しない限り、顧客コンテンツを開発・改善に使わない(4.2)。個人向けは、改善のために使うことがあり、学習に使われたくない場合の手順が別に案内されています。
- Google:Gemini APIの追加規約は、有料サービスでは、プロンプトと応答を製品改善に使わないと書き、無料枠のサービスでは、製品改善に使い、人間の確認者が読むことがあると書いています。
- xAI:法人向けは、利用者のコンテンツで基盤モデルを訓練しないと書いています。匿名化したデータは、別の扱いがあります。条項番号は、読んだ版によって違うため省きます。
- Mistral AI:法人向けは、列挙した場合(オプトインした製品、フィードバック、注文書の定め、ラボ・プレビューのモデルなど)を除き、顧客のデータと出力でモデルを訓練しない(4.2)。
補償(IP indemnity)
各社の補償の範囲と除外(細かい比較)
| 会社・文書 | 補償の対象(要約) | 主な除外・条件(要約) |
|---|---|---|
| Anthropic 法人向け(K節) | 有料の利用と、その正規の利用で生じた出力が、第三者の知的財産を侵害するという請求を、防御し、判決や承認済みの和解の分を補償 | 利用者による改変、他社の技術や内容との組み合わせ、利用者の入力、侵害と知っていた・知るべきだった使い方、出力に含まれる特許発明の実施、出力を商取引で使ったことによる商標の主張など(K.3)。補償は第三者の請求に対する唯一の救済(K.5) |
| OpenAI Services Agreement(13節) | 「サービスが第三者の知的財産を侵害する」という請求について、防御し、賠償・費用を補償 | 他社の製品との組み合わせ、OpenAI以外による改変、顧客コンテンツ(入力と出力を含む定義)、顧客のアプリケーションなど(13.1)。13.1に「出力」の語は出てこない。サービス固有条件の補償は責任上限の対象外 |
| Google Cloud(サービス固有条件 20節 i) | 補償の対象サービスで、未改変の生成出力が侵害だという請求。別に、Googleが学習データを使って事前学習モデルを作ったことが侵害だという請求 | 侵害の可能性が高いと知っていた使用、出典表示やフィルターなどの安全のための道具を無効にしたり変更した場合、権利者の通知後の使用、商標関連、顧客のデータの権利がない場合。無料提供の機能は対象外。対象サービスは別の一覧で定める |
| Microsoft Customer Copyright Commitment | Azure OpenAI(Foundry Models)、設定可能な生成AIサービス(Copilot Studio、GitHub Copilot)の出力についての第三者のIP請求を防御 | 必須の対策を実施していること。メタプロンプト、テストと評価、用途別の保護素材フィルターとジェイルブレイク対策のフィルターなど。後から非同期フィルターに検出された出力は対象外 |
| xAI Enterprise(9.1) | 顧客が許可された範囲でサービスを使うことが、第三者の知的財産を侵害するという請求を防御・補償 | 10月23日に読んだ版では、サービスの改変、他社の製品などとの組み合わせ、規約違反の使用、顧客が与えた入力・出力・学習データの4項目(9.1(1)〜(4))。10月8日の読みでは7項目の要約で、無料・試用などを含んでいましたが、どちらが現行か確かめられていません |
| Mistral AI 法人向け(8節) | 同社の製品が第三者の知的財産を侵害するという請求を防御・補償 | 他社のソフトとの組み合わせ、同社以外による改変、顧客のデータ、侵害と知っていた・知るべきだった使用、規約違反、法令違反など(8.2)。補償は唯一の救済(8.5) |
Microsoftについては、ページに、効力日が2023年12月1日、2024年5月21日、2025年6月1日、2026年4月3日の項目が書かれています。GitHub関連は、2026年4月3日時点で追加の必須対策はない、とされています。Copilot Studioで外部のモデルをつないだ場合は、Azure OpenAIで動き、要件を満たす場合を除き対象外と書かれています。
見立てです。補償を読むときに、確認したい点は次の4つだと思います。
- 法人向け・有料の契約か(個人向けの規約には、読んだ範囲で見当たらなかった)。
- 「出力」が明示されているか。Anthropic、Google、Microsoftは出力を明示しています。OpenAIの13.1には出力の語がなく、「サービスの侵害」という書き方です。
- 安全機能を使うことが条件か(GoogleとMicrosoft)。
- 除外に、自社の使い方が入っていないか(改変、組み合わせ、商標など)。
禁止事項と、競合モデル
- Anthropic:法人向けは、競合する製品やサービスを作るため(競合するAIモデルの訓練を含む)にサービスを使うことと、承認なしの再販売を禁じています(D.4)。個人向けも、競合製品(AI/MLモデルを含む)の開発と再販売を禁じています。評価目的の利用は、個人の非商用に限られます。
- OpenAI:法人向けは、出力を使って競合するAIモデルを開発することを禁じます。ただし、配布しない分類器や埋め込み、提供されたサービスのファインチューニングなど、限定的な例外があります(3.3(e))。個人向けも、出力を使った競合モデルの開発や、AI生成物を人間が作ったものとして示すことを禁じています。
- Google:Gemini APIの追加規約は、サービスと競合するモデルの開発と、モデルの構成要素の抽出・複製を禁じています。専門的・業務的な利用が対象で、消費者向けの利用は想定外とされます。18歳未満向けや、臨床・医療助言としての利用なども制限されます。
- xAI:法人向けは、競合モデルの開発を直接禁じる条項は見つかりませんでした。一方、利用者が、出力で自社や委託先のAIモデルを訓練することと、出力を人間が作ったものとして示すことを禁じています。条項番号は、読んだ版によって違うため省きます。
- Mistral AI:画像の出力を使って、競合する画像生成製品を訓練することを禁じています(3.3)。テキストの出力についての同様の禁止は、読んだ範囲では見つかりませんでした。
OpenAIの欧州向け利用規約には、人についての出力を、雇用や医療のような、その人に法的または重大な影響のある判断に使ってはならない、という趣旨の記述があります。
読み方・選び方
見立てです。仕事で使う前に、次の順で見ると整理しやすいと思います。
- どの契約か。チャット画面の個人プランで仕事をすると、法人向けの補償や学習の約束は適用されない可能性があります。
- 何を作るか。社外に出す文章・画像・コードかで、除外条件(商標、侵害を知っていた使い方など)の重さが変わります。
- 学習の扱い。社内の機密を入れるなら、学習に使われない約束があるか、オプトアウトできるかを確認します。
- 競合の禁止。AIを作る・訓練する側の会社は、出力を使ってモデルを改良することが禁止されていないかを見ます。
見立てです。規約の「権利」の条項だけを見て安心せず、補償の除外と、安全機能の条件も確認したほうがよいと思います。
よくあるつまずき
見立てです。
- 個人向けのチャットで作った出力を、法人向けの補償の対象だと思い込む。
- 出力に手を加えたあとも補償が続くと思い込む。除外に「改変」を挙げる文書があります。
- 無料枠・試用・プレビューが対象か確認しない。Googleは、無料提供の機能を補償の対象外にしています。xAIは、10月23日に読んだ版の補償の除外には、無料や試用の記載が見つかりませんでした。
- 規約の日付を確認しない。今回読んだ文書は、2025年6月から2026年9月までの間にばらついていました。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。ページに書かれた文言をまとめたものです。
- 規約の全文は、各社のページで見てください。ここに書いたのは要約で、細部は省いています。
- 規約は、国や契約の種類(個人、法人、API、クラウド経由、パートナー経由)で別の文書になります。読んでいない文書があります。たとえば、OpenAIのコピーライト・シールドという名前の公式ページは、読めていません。Googleのサービス固有条件の更新日は、確認できていません。
- xAIのページは、取得先の制限で直接取得できず、同じ内容を2回、ツール経由で読みました。Mistral AIの条件は、1回の取得での要約です。細かい条項番号は公式ページで再確認してください。
- xAIは、10月23日にもう一度読んだところ、ページの「Last Updated」は2026年5月12日、契約当事者名は「X.AI LLC」で、10月8日に読んだ版(2026年8月14日更新、「SpaceXAI LLC」)と食い違いました。10月23日の要約では、第3節の小見出しは3.1「Generally」、3.2「Rights in Input and Output」、3.3「De-Identified Data and Data Retention」、補償は9.1で、除外も4項目の要約でした。このため、xAIの項番号や除外の細目(表の9.1の除外を含む)は、どちらの版に当たるか確かめられていません。xAIの項目は公式ページで確認してください。
- 出力に著作権が生じるか、日本法やEU法でどう扱われるかは、この記事では扱っていません。
- この記事は、規約の紹介であり、法的助言ではありません。実際の契約の判断は、専門家に相談してください。
- 規約や補償の条件は、予告なく変わることがあります。
出典
- Commercial Terms of Service(Anthropic、2026年10月23日確認)
- Consumer Terms of Service(Anthropic、2026年10月23日確認)
- Services Agreement(OpenAI、2026年10月23日確認)
- Terms of Use(OpenAI、2026年10月8日確認)
- EU Terms of Use(OpenAI、2026年10月23日確認)
- Gemini API Additional Terms of Service(Google、2026年10月23日確認)
- Google Cloud Service Specific Terms(Google、2026年10月8日確認)
- Generative AI Indemnified Services(Google Cloud、2026年10月23日確認)
- Customer Copyright Commitment Required Mitigations(Microsoft Learn、2026年10月23日確認)
- Terms of Service - Enterprise(xAI、2026年10月23日確認。ページの表示は2026年5月12日更新)
- Terms and policies(Mistral AI、2026年10月8日確認)
- Commercial Terms of Service(Mistral AI、2026年10月23日確認)
更新履歴
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2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
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2026年10月23日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。
- 前:xAIの規約は2026年8月14日更新、契約当事者は「SpaceXAI LLC」 → いま:読み直すと2026年5月12日更新、「X.AI LLC」と出ました。どちらが新しい版かは未確認です
- 前:xAI法人向けの条項番号(3.1、3.3など)を書いていた → いま:読んだ版で番号が違うため、番号は省きました
- 前:xAIの補償の除外は7項目(無料・試用なども含む) → いま:読み直した版では4項目(改変、他社製品との組み合わせ、規約違反の使用、入力・出力など)。どちらが現行かは未確認です
- 前:xAIは出力でAIシステムを訓練することを、書面の許可がない限り禁じる → いま:自社や委託先のAIモデルの訓練と、出力を人間が作ったと示すことを禁じる、と書きました
- 前:無料枠や試用が補償の対象外なのはxAIとGoogle → いま:Googleだけ。xAIは読み直した版に無料・試用の記載が見つかりませんでした
- 前:規約の版についての注意はなかった → いま:xAIだけ読み直しで食い違いが見つかった、と注意を足しました
- 一部の出典は読めなかったため、その部分は前のままです。
