3行でいうと

  • 「AIで作ったものには必ずこう表示する」という、個人の一般利用者向けの全国共通の決まりは、確認できていません。
  • 決まりがあるのは場面ごとです。他人の文章の引用、投稿先の申告ルール、広告の表示、学校の規則、EU向けの事業などです。
  • 他人の文章を引用するときは、著作権法48条で出所の明示が必要です。AIの表示をつける決まりではありません。
  • 見立てでは、迷ったら「AIを使ったこと」と「どこまで使ったか」を短く書いておくのがいちばん安全です。

この記事は、公式・一次資料を読んでまとめたものです。法律の話は条文や公式資料の紹介で、個別の判断は弁護士など専門家にご相談ください。僕らの考えは「見立てです。」と分けて書きます。

先に結論

何が問題か

たとえばこういう場面があります。

どの場面にも、同じ法律が一つだけ当てはまる、という形にはなっていません。順に見ていきます。

公式・一次資料に書かれていること

他人の作品を使うとき:出所の明示(著作権法)

e-Govの条文(2026年10月8日に取得)によると、公表された著作物は、公正な慣行に合い、報道・批評・研究などの目的上正当な範囲であれば、引用して利用できます(32条1項)。そして48条1項1号は、この引用で複製する場合には、著作物の出所を、複製や利用のしかたに応じて合理的と認められる方法と程度で明示しなければならない、と定めています。著作者名が表示されている場合は、それを示します(48条2項)。

これは「他人の作品を引用したとき」の決まりです。「AIが作ったものにAI表示をつける」決まりではありません。見立てです。AIの答えに出典が付いていても、引用して使うなら、元の資料を自分で開いて確かめた上で、出所を書く方が安全だと思います。

文化庁のチェックリスト:説明できる状態にしておく

文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)には、AI生成物を著作物であることを前提に契約やライセンスの取引に出す場合は、AIを使ったものであることや、著作物にあたるかどうかを、関係者に適切に説明することが求められる、と書かれています。あわせて、既存の作品を侵害していないか確認したことも、説明できるようにしておくのが望ましいとされています。

また、依拠性(既存の作品をもとにしたか)がないことを説明できるよう、生成に使ったプロンプトなど、生成の過程を確認できる状態にしておくよう努めることが望まれる、とあります。これは法的な義務の記述ではなく、望ましい取り組みとして書かれています。

国のAI事業者ガイドライン:透明性

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月31日)は、AIを作る・提供する・使う事業者が取り組むことの考え方を示すものです。法的な拘束力のない「ソフトロー」と位置づけられています。

「透明性」の項では、関係する人に、AIを利用しているという事実と、活用している範囲などの情報を、合理的な範囲で提供することが重要、と書かれています。注には、生成物であることを示す透かしを入れるなどの工夫が、人の判断を挟むための方策として挙げられています。事業者向けの文書なので、個人の投稿にそのまま当てはまるわけではありません。

投稿先のルール:YouTubeの例

YouTubeの公式ヘルプ(英語版)では、投稿者は、現実と見分けがつかないほど写実的に作ったり変えたりした内容は、申告することになっています。申告が必要な例として、次のものが書かれています。

  • 実在の人物が、実際にはしていないことを言ったりしたように見せる。
  • 実際の出来事や場所の映像を変える。
  • 実際には起きていない、写実的な場面を作る。

申告が要らない例は、現実にありえない空想の場面、色や美顔などの見た目だけの軽い編集、台本やアイデアの補助にAIを使った場合、などです。申告しない投稿者には、ラベルをYouTube側で付けたり、ペナルティを科したりすることがある、とも書かれています。また、申告しても、動画の見られ方や収益化には影響しない、と書かれています。ラベルは、YouTubeの生成AIツールで作った場合や、出所情報(C2PA)が付いている場合に、自動で付くこともあります。

他の投稿先にも似た仕組みがあるかもしれません。この記事では、YouTube以外を確認していません。

目に見えない「しるし」:メタデータと透かし

AI会社の中には、作った画像や音声に、目に見えない「しるし」を入れているところがあります。OpenAIの公式ヘルプによると、対応する画像には、出所情報(C2PAという共通の規格のメタデータ)と、見えない透かし(SynthID)が入り、音声には透かしが入ります。文章は、現時点では対象外です。

ただし、同じヘルプに、限界も書かれています。

  • メタデータは、プラットフォームや編集ソフト、ファイル変換で消えることがある。
  • 透かしも、圧縮や切り抜きなどで弱まることがある。
  • しるしがないことは、そのAI会社が作っていない、という証明にはならない。
  • しるしがあっても、内容が正確か、編集されていないか、権利があるか、は分からない。

つまり、しるしがあるからといって、自分で「AIで作った」と書く必要がなくなるわけではないと思います(見立てです)。

広告として出すとき:国の要請と、ステマ規制

2026年8月7日付で、警察庁、金融庁、消費者庁、デジタル庁、総務省、法務省、経済産業省は、大きなSNSなどの事業者あてに、なりすまし詐欺広告への対策強化を要請しました。内容の一つが、広告の透明性の向上です。広告主の名称や所在地などと、「広告である旨」「主に生成AIを用いて作られた広告である旨」などを、利用者が確認できるようにすることが求められています。これは法律ではなく、行政手続法上の行政指導(お願い)と、文書に書かれています。事業者は2026年10月16日までに、実施内容を報告するよう求められています。概要版の資料には、2026年10月1日から2027年2月28日までの実施結果を、2027年3月16日までに報告することも書かれています。

もう一つ、別の話ですが、消費者庁のページによると、2023年10月1日から、広告であるのに広告と分からないようにする「ステルスマーケティング」は、景品表示法違反になります。責任を負うのは、商品やサービスを提供する事業者(広告主)です。AIを使うかどうかとは別の決まりですが、AIで作った紹介文や投稿を、広告として出す人には関係します。

EU:AI法50条

EU(欧州連合)のAI法の50条は、2026年8月2日から適用されます。欧州委員会のページによると、生成AIの提供者は、出力に機械で読める「しるし」を付ける義務があり、ディープフェイクを公開する利用者(事業者)は、見る人に開示しなければなりません。公共の利益に関する文章をAIで作って公表する場合も、人による確認や編集責任がなければ、表示が必要です。2026年8月2日より前に市場に出ていたシステムには、しるしを付ける義務(50条2項)に限り、2026年12月2日までの猶予がある、とも書かれています。個人の、仕事ではない利用は、AI法の対象外とされています。EU向けに事業をする人は、専門家に確認してください。

学校の場合

文部科学省の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(Ver. 2.0、2024年12月26日)は、コンクール作品やレポート・小論文を、生成AIの生成物をほぼそのまま自分の成果物として応募・提出することを、不適切と考えられる例に挙げています。AI使用の書き方は、学校や応募要項の指示に従うことになります。同省は、このガイドラインの改定(ver2.1)の検討状況を、2026年10月1日の委員会資料で示しています。

場面ごとの早見表

場面 書かれていること 根拠の性質
他人の文章・作品を引用する 出所を、合理的な方法と程度で明示する 著作権法48条(法律)
動画サイトに写実的なAI作品を載せる 投稿者が申告する。しないとラベルやペナルティ サービスのルール
AI生成物を取引する AIを使ったことや著作物性を説明できるように 文化庁のチェックリスト(望ましい取り組み)
大きなSNSの広告 「AIで作った広告」などの表示を国が要請 行政指導(法律ではない)
広告を出す 広告だと分かるように 景品表示法
EU向けの事業 ディープフェイクの開示、しるしの付与 EU AI法50条
学校の課題・コンクール 規則や募集要項に従う 学校・主催者の規則

今日からできる対策

見立てです。AIを使ったことを書くと、書き手の信用が下がるように感じるかもしれません。でも、あとから「AIだった」と分かる方が、信用を損ないやすいと思います。「アイデア出しに使った」「下書きをAIに作らせて自分で直した」のように、どこまでかを具体的に書くと、読む人にも伝わりやすくなります。

気をつけること

出典

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