3行でいうと

  • 見本を付けずに頼むのが「ゼロショット」、見本を数個付けて頼むのが「フューショット」です。見本は、書き方、口調、形をそろえたいときに向いている、と公式の文書に書かれています。
  • 見本の数と作り方は、Anthropicが「3〜5個」、Googleが、具体的でばらつきがあり、形のそろった見本がよく、多すぎると見本に似すぎることがある、としています。
  • 見本を貼ると、AIは見本に寄ります。見本を選ぶことは、頼みごとの一部です。

この記事は、公式の文書を読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。文書は要約を介して読んだので、公式の文章は引用せず、僕らの言葉で言い換えています。例文は僕らが作ったもので、公式のものではありません。「見立てです。」で始まる段落は、公式に書かれていない僕らの考えです。

先に結論

公式の文書を読んで言えることは、次の4つです。

  1. 見本つきの頼み方には名前があります。 見本なしは「ゼロショット」、見本ありは「フューショット」です。Googleの文書が、この2つを分けて説明しています。
  2. 見本は、中身より「形」を伝えるのが得意です。 Anthropicは、見本は出力の形、口調、構造を導く最も確実な方法のひとつ、という趣旨のことを書いています。Googleも、見本は書式、言い回し、範囲、型を整えるとしています。
  3. よい見本の条件は、3社でほぼ同じです。 実際の用途に近いこと、ばらつきがあること、形がそろっていること、見本と指示の境目がはっきりしていること。
  4. 見本が多ければよい、ではありません。 Googleは、多すぎるとAIが見本に合わせすぎる、と注意しています。数は試して決める、というのが公式の立場です。

たとえ話:記入例つきの申込書

役所や銀行の申込書には、「記入例」が付いていることがあります。白紙の欄に「住所は都道府県から」と文章で書いてあるより、記入例が1枚あるほうが、迷わず書けます。

AIへの頼み方も似ています。「商品の紹介文を、短く、親しみやすく」と言葉で説明するより、気に入った紹介文を2、3個見せて「この調子で、次の商品も」と頼むほうが、伝わりやすい場面があります。これが、フューショットです。

ただし、記入例に「山田太郎」と書いてあったからといって、全員が山田太郎と書いたら困ります。見本は「型」を見せるもので、中身まで写してほしいわけではありません。AIにもそれが伝わるように、見本を選ぶ必要があります。

公式の文書が言っていること

フューショットとは何か

Googleの文書(Gemini API)は、見本のないプロンプト(AIへの頼みごとの文章)をゼロショット、見本が数個あるものをフューショットと呼び、見本は書式、言い回し、範囲、全体の型を整える役割を持つ、と書いています。しかも、「見本を必ず入れることを勧める」「入れないと効果が下がりやすい」と、かなり強く書いています。見本がはっきりしていれば、その分、文章の指示を減らしてもよい、とも書いています。

OpenAIの文書は、フューショットを、入力と望ましい出力の組を少数、頼みごとの中に入れて、新しい作業をさせる方法と説明しています。AIそのものを追加で学習させる(ファインチューニング)のではなく、頼みごとの文章の中で、AIが「型」を読み取る、という説明です。

見本はいくつ入れるか

よい見本の条件

条件 公式に書かれていること
実際の用途に近い Anthropicは、実際に使う場面を映した見本を求めています。
ばらつきがある 3社とも書いています。似た見本ばかりだと、AIが、たまたま似ていた点まで「決まり」と受け取るためです(Anthropicの説明)。
形がそろっている Googleは、見本どうしの書き方(タグ、空白、改行、区切り)を同じにするよう書いています。
見本と指示を区別できる Anthropicは、見本をというタグで囲むよう書いています。OpenAIの例も、見本ごとにタグで囲んでいます。

OpenAIの文書には、見本つきの実例があります。商品レビューを「ポジティブ・ニュートラル・ネガティブ」に分ける作業で、「音質がすばらしい」は前向き、「電池はまあまあだが、耳当てが安っぽい」は中立、「対応がひどい」は後ろ向き、という3つの見本を見せ、答えは1語だけにするよう指示しています。3種類の答えがそろっている点が、ばらつきの例になっています。

見本が「長さ」や「口調」を動かす

Googleの文書には、短い答えを好む見本を2つ足すと、AIの答えが長い説明から短い説明に変わった、という実例があります。OpenAIの長さの調整に関するヘルプも、望む長さの見本を入れると、その長さを保ちやすくなる、と書いています。

見立てです。「見本を見せる」のは、「これくらいの長さで、この調子で」と、言葉で説明しにくいことを伝える近道だと読みました。

日常での使い方:僕らの例

公式の文書は、開発者向けの書き方(見本をタグで囲む、など)が中心です。ふだんの会話では、同じ考え方を、次のように置き換えられると思います。以下は僕らが作った例です。

商品の紹介文を書いてください。見本のように、2文で、親しみやすい口調でお願いします。

【見本1】
商品:手ぬぐい
紹介文:薄くてすぐ乾く、旅の相棒です。タオルより軽く、バッグのすき間に入ります。

【見本2】
商品:ステンレスのマグカップ
紹介文:冷めにくく、落としても割れません。朝のコーヒーも、キャンプの夜も、これ1つで足ります。

【今回】
商品:折りたたみの傘
紹介文:

ポイントは3つです。

今日からできること

やってはいけないこと

誤解されやすい点

「見本は多いほどよい」わけではない Googleは、多すぎるとAIが見本に合わせすぎる、と書いています。Anthropicも、見本が似すぎていると、意図しない癖まで拾うことがある、という趣旨のことを書いています。

「見本があれば、説明はいらない」とは言い切れない Googleは、見本が十分はっきりしていれば指示を減らせる、と書いています。ただ、それは見本が目的を正しく表している場合の話です。迷ったら、見本と一緒に、1〜2文で目的も書くほうが安全だと思います。これは見立てです。

「フューショットは開発者だけの技術」ではない 公式の文書は開発者向けです。ChatGPTのヘルプ(プロンプトのコツ)には、読んだ範囲では見本の話は載っていませんでした。Googleのワークスペース向けの記事も、見本の与え方は扱っていませんでした。それでも、ふだんの会話で見本を貼るだけなら手軽に始められる、というのが僕らの見立てです。効果の大きさは確かめていません。

3社の文書の比べ方
項目 Anthropic Google OpenAI
見本を入れるか 3〜5個を勧める 必ず入れるよう勧める 少数を入れる方法として紹介
個数 3〜5個 試して決める。多すぎるとオーバーフィット 目安の記載は読んだ範囲では見当たらない
ばらつき 必要(意図しない癖を避ける) 具体的で、ばらつきのある見本 いろいろな入力と望む出力の組
区切り タグ 見本どうしで形をそろえる 見本ごとにタグ(例の組を対応づける)
その他 「考える」機能と一緒でも使える。問題、使う方法、答えの順で見せる 補完(続きを書かせる)の方法も紹介 見本は開発者向けのメッセージに入れる

気をつけること

出典

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