3行でいうと

  • MicrosoftとGoogleの公式の指南は、良い依頼を4つの部分(目的、背景、材料、形など)に分けています。僕らは、これを「目的・材料・欲しい形」の3つにまとめ直しました。この3つ組は僕らの整理で、公式の言い方ではありません。
  • Googleは、4つ全部はそろえなくてよい、と書いています。MicrosoftやOpenAIは、足りなければ後から言い足して直す、と書いています。
  • 総務省の白書は、入力した個人情報や機密情報が外に出るおそれを挙げています。材料に入れる前に、入れてよい情報かを確かめるのが、僕らの勧める最初の一歩です(見立てです)。

この記事は公式の文書を読んでまとめたもので、実際に使って確かめた記録ではありません。例文は僕らが作ったもので、公式のものではありません。

先に結論

聞く前に決めておくとよい3つは、次のとおりです。

  1. 目的: 何のために、誰のために、何ができあがれば成功か。
  2. 材料: AIに知っておいてほしい背景と、使ってほしい資料。入れてはいけない情報は外す。
  3. 欲しい形: 箇条書きか文章か、長さ、口調、読む人。

Microsoft Learnの学習ページは、「目的」を土台として、背景、材料、期待する応え方の3つが答えの精度を上げる、と説明しています。僕らの3つは、これと近い考え方ですが、同じではありません。

たとえ話:行き先を言わずに、タクシーに乗る

僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。

タクシーに乗って、「どこか、いい感じのところへ」とだけ言ったら、運転手さんは困ります。

この3つを最初に伝えれば、運転手さんは迷わず走れます。AIも同じです。AIの運転手さんは、事情を何も知らない状態で乗ってきます。Anthropicの指南は、AIを「優れているが、あなたの職場の規範や進め方をまだ知らない新入社員」にたとえています。そして、事情を知らない同僚に依頼の文章を見せて、その人が迷うなら、AIも迷う、という確かめ方を紹介しています。

公式は何を「決めておく」ように言っているか

Microsoftの4つ

Microsoftのサポートページ(Copilot向け)は、良い依頼に、してほしいこと、背景、応えてほしい形、使ってほしい情報源の4つを入れるよう書いています。次の英語の呼び名は、Microsoft Learnのページの言い方に合わせたもので、サポートページの原文では見出し語として確認できませんでした。

Microsoft Learnの学習ページ(2025年7月8日更新と表示)は、同じ4つを少し違う順番で挙げ、目的が土台で、残りの3つが精度を上げる、と書いています。説明は次のとおりです。

2つのページで、4つの並べ方が違います。順番に決まりはなく、中身がそろっていることが大事だ、と僕らは読みました(見立てです)。

Googleの4つ

GoogleのGemini for Workspaceの案内は、ペルソナ(AIに持たせる役)、タスク(作業)、背景、形式の4つを挙げ、4つ全部は要らない、としています。また、自然な文章で、同僚に頼むように書くこと、短く明確にして専門用語を避けること、不足があれば追加の依頼で直すことを勧めています。

4つを3つにまとめ直した対応表
僕らの3つ Microsoftの呼び名 Googleの呼び名
目的 Goal(背景の一部も) タスク
材料 Context(背景)、Source コンテキスト(背景と資料)
欲しい形 Expectations フォーマット(と、ペルソナ)

この対応は、僕らがまとめ直したものです。公式の文書が、この3つに分けているわけではありません。

3つを決める:それぞれの考え方

1. 目的:何のために、何ができれば成功か

「メールの返事を書いて」だけでは、お詫びなのか、断りなのか、日程調整なのかが、AIには分かりません。Anthropicの指南には、「こうしてほしい」だけでなく、理由を添えると、AIがその意図に合わせられる、という説明があります。例は、「省略記号を使わないで」と書くより、「読み上げ機で読まれるので、省略記号は使わないで」と書く、というものです。

目的を決めるときは、次の3点を考えると整理しやすいです(僕らの整理)。

2. 材料:AIが知らないことを、渡す

AIは、あなたの事情を知りません。取引先の名前、これまでのやり取り、日付、あなたの立場は、書かなければ伝わりません。Microsoftの指南は、材料を渡す位置についても例を出しています。依頼の部分の並べ方を変えた2つの例を比べ、後ろに置いたほうが強調されるので、材料を最後に置くとよい、と示唆しています。

Googleの開発者向け文書は、長い資料を渡すときは、材料を先にすべて渡して、質問や具体的な指示を最後に置くよう書いています。Microsoftの例は「材料を最後に」と読めるもの(要約を介した読みで、断定はできません)、Googleは「質問を最後に」と、言い方は違います。どちらが良いかは、AIの種類や場面によるようです。この点は、読んだ文書だけでは決められませんでした。

材料に入れる前に、確かめること。 総務省の令和6年版の白書は、個人情報や機密情報をプロンプトに入力すると、出力を通じて外部に流出するおそれがある、と挙げています。名前、住所、電話番号、会社の内部資料などを入れてよいかは、使うサービスと設定で違います。くわしくは、同じ連載の個人情報の記事を見てください。迷ったら、固有名詞を「A社」「Bさん」のように置き換えて、材料にするのが、僕らの考える安全な始め方です(見立てです)。

3. 欲しい形:形・長さ・口調・読む人

Googleの開発者向け文書は、制約(要約を1文に、など)と、返事の形式(表、箇条書き、段落など)を書くよう勧めています。OpenAIのヘルプは、口調を形容詞(フォーマル、親しみやすい、など)で指定するよう書いています。Microsoftは、読む人を書くよう勧めています。

Anthropicの指南は、してはいけないことより、してほしいことで書くほうがよい、としています。例は、「マークダウンを使わないで」より、「流れるような文章の段落で書いて」です。

例:お礼のメール

僕らが作った例です。公式のものではありません。

決める前の依頼

お礼のメールを書いて

3つを決めたあとの依頼

【目的】先週、見学に来てくれた取引先の担当者に、お礼を伝えたい。次の打ち合わせの日程も相談したい。 【材料】相手は「B社の田中さん」(仮名)。見学では新製品の試作品を見てもらった。次の打ち合わせは、来月の前半を希望。 【欲しい形】丁寧だが、かたすぎない口調。5行以内。件名もつけて。

2つ目は長く見えますが、1つ目と違い、AIが想像で埋める部分がほとんどありません。ただし、これで必ず思いどおりになるわけではありません。公式の文書も、最初の依頼は出発点で、返事を見て言い足して直すもの、としています。

誤解されやすい点

「3つ全部、毎回そろえなければならない」 Googleの案内は、4つ全部は要らないと書いています。簡単な質問は、1行で足ります。3つは、返事が期待と違ったときに、「どれが足りなかったか」を探すための目安として使うほうが現実的です(見立てです)。

「長く書くほどよい」 Googleの案内は、短く、明確に、と書いています。大切なのは、長さでなく、AIが知らない事情が入っていることです。

「決まった型を守れば、同じ結果になる」 Anthropicの指南は、技法のうちモデル名が挙がっているものは、そのモデルで測ったものとして扱い、別のモデルに使う前に自分で確かめ直すよう書いています。同じ依頼でも、AIの種類や時期で、結果は変わりえます。

今日からできること、やってはいけないこと

どれも、公式ページの内容を土台にした、僕らの整理です。

今日からできること

やってはいけないこと

気をつけること

出典

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