3行でいうと
- Anthropicの調査機能では、リーダー役と部下役の構成が、単独のOpus 4を内部評価で90.2%上回った。向くのは、並行して調べられる広い課題。
- 同社の数字で、エージェントはチャットの約4倍、複数エージェントは約15倍のトークンを使う。Claude Codeのエージェントチームは約7倍。
- Cognitionは、部下が互いの行動を見えないと判断が食い違うとして、複数エージェントの構成は壊れやすいと主張している。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の記事や文書を読んでまとめたものです。数字は各資料のもので、価格は2026年10月22日にClaudeの料金ページで読み直しました。
先に結論
- 複数のAIを組み合わせる利点は、(1)並行して進められる、(2)それぞれが別の文脈(読む範囲)で動くので、1つの文脈に収まらない量を扱える、の2点です。
- 代償は、費用と調整の難しさです。Anthropicは、価値の高い仕事でなければ採算が合わないと書いています。
- 向くのは「独立した調べものを並べられる」仕事、向かないのは「全員が同じ文脈を共有する」「互いに強く依存する」仕事です。Anthropicは、多くのコーディングは、調査より並列にできる部分が少ないとしています。
- まず1つのAIで作り、足りない所だけ増やすのが安全、というのが、読んだ資料からの僕らの見立てです。
前提:言葉の整理
- エージェントは、道具を繰り返し使いながら、自分で段取りを決めて進めるAIの使い方です。
- マルチエージェントは、そのエージェントを複数動かす構成です。
- オーケストレーター(リーダー)は、仕事を分け、部下に割り振り、結果をまとめる役です。サブエージェント(部下)は、割り振られた一部を担当します。
- ハンドオフは、会話の担当を別のエージェントに渡すことです。
- 文脈の分離は、各部下が自分の読む範囲を持ち、途中の作業が親の文脈に溜まらないことです。親には最終の報告だけ戻ります(Claude Agent SDKの文書)。
代表的な型
1. リーダーと部下(オーケストレーター・ワーカー)
Anthropicの「Building effective agents」は、リーダーのAIが仕事を動的に分けて部下に任せ、結果をまとめる型を、「何を分けるか事前にわからない複雑な仕事(複数ファイルにわたる変更、複数の情報源にまたがる検索)」に合うと説明しています。分け方があらかじめ決まっている並列実行との違いは、柔軟さです。
2. 並列実行
同じ記事は、独立した部分を同時に走らせる型を2種類挙げています。仕事を独立した小さな仕事に分ける方法と、同じ仕事を何度もやらせて結果を比べる方法(投票)です。OpenAIのAgents SDKの文書は、コードで制御する型として、複数のエージェントを並行して走らせる方法(asyncio.gatherなど)を挙げ、互いに依存しない仕事に速度の点で役立つとしています。
3. 管理役が呼ぶ型と、担当を渡す型
OpenAIのAgents SDKの文書は、2つの型を区別しています。
| 型 | 仕組み | 向く場面 |
|---|---|---|
| ツールとしてのエージェント | 管理役が会話の主導権を持ち、専門のエージェントを道具として呼ぶ | 最終の答えを1つのエージェントに持たせたい、複数の結果をまとめたい |
| ハンドオフ | 受付役が専門のエージェントに会話を渡し、その専門が以後の応答を持つ | 専門が直接答えたい、指示を切り替えたい |
文書は、両者を組み合わせてもよいとしています。また、LLMに任せる方法はオープンな仕事に向き、コードで流れを決める方法は速度・費用・性能が予測しやすい、と説明しています。
実例:Anthropicの調査機能
Anthropicの記事(2025年6月13日)は、自社の調査機能の作り方を説明しています。
- 構成:リーダー役が方針を立て、3〜5の部下を並行して走らせる。部下は検索結果を整理し、リーダーに返す。最後に、引用の担当が出典を付ける。
- 性能:リーダーにClaude Opus 4、部下にClaude Sonnet 4を使う構成が、単独のOpus 4を、社内の調査評価で90.2%上回った。広く、独立した方向を同時に調べる質問で特に効いた、とあります。
- 理由の分析:BrowseComp(見つけにくい情報を探す評価)での成績のばらつきの95%を、3つの要因が説明した。トークン使用量だけで80%を説明し、残りがツールの呼び出し回数とモデルの選択。つまり、十分な量のトークンを使えることが効く、という見方です。
- 速度:リーダーが部下を並行に起動し、部下も複数の道具を並行に使うようにして、複雑な質問の調査時間を最大で90%短縮した。
費用はどれだけ増えるか
同じ記事の数字です。エージェントはチャットのおよそ4倍、複数エージェントのシステムはおよそ15倍のトークンを使います。Anthropicは、採算が合うのは、仕事の価値が増えた費用を払えるほど高い場合だけ、としています。
Claude Codeの文書にも数字があります。エージェントチーム(各メンバーが別のClaudeとして動く機能。実験的で初期設定では無効)は、メンバーが計画モードのとき、通常のセッションの約7倍のトークンを使うとされます。費用はメンバー数にほぼ比例し、メンバーにはSonnetを使う、チームを小さく保つ、仕事が済んだメンバーは止める、が勧められています。
費用の計算例(仮の数字です)
トークン数は僕らが置いた仮の数字です。単価はClaudeの料金ページ(2026年10月22日確認。10月8日にはモデル一覧のページとも一致を見ましたが、10月22日に読み直したのは料金ページだけです)の、100万トークンあたりの値です。Opus 5.5は入力4ドル・出力20ドル、Sonnet 5.5は入力2ドル・出力10ドル、Haiku 5.5は入力0.10ドル・出力0.50ドル(入力10万トークン以下の場合)です。キャッシュや割増は入れていません。変わることがあります。
僕らの計算です。次の4つの構成を比べます。
| 構成 | 内訳(仮) | 合計トークン | 費用 |
|---|---|---|---|
| A. 単独のOpus 5.5 | 入力20万、出力2万 | 22万 | 1.20ドル |
| B1. リーダーOpus、部下5人がHaiku | リーダー入力3万・出力5千、部下は各入力6万・出力8千 | 37.5万 | 0.27ドル |
| B2. リーダーOpus、部下5人がSonnet | 同じ | 37.5万 | 1.22ドル |
| B3. リーダーOpus、部下5人もOpus | 同じ | 37.5万 | 2.22ドル |
計算の例:B2の部下1人は、6万×2ドル÷100万+8千×10ドル÷100万=0.12+0.08=0.20ドル。5人で1.00ドル。リーダーは3万×4ドル÷100万+5千×20ドル÷100万=0.12+0.10=0.22ドルなので、合計は1.22ドルです。
読み取れることは次のとおりです。トークンの総量は、どの構成でもAの約1.7倍に増えます。しかし費用は、部下に使うモデルで0.27〜2.22ドルと大きく変わります。部下の仕事が単純なら、小さなモデルに任せると、費用を抑えられる可能性があります。ただし、品質が保てるかは別の確認が要ります。Claude Codeの文書も、単純な部下にはHaikuを指定する方法を案内しています。
反対の意見:複数エージェントは壊れやすい
Cognition(コーディングAIのDevinの開発元)の記事(2025年6月12日、「Don't Build Multi-Agents」)は、リーダーが仕事を分けて部下に任せる構成を、「魅力的だが脆い」と書いています。例は、ゲームの背景と鳥を別々の部下に作らせたところ、片方が仕事を取り違え、もう片方も見た目が合わず、最後にまとめる側が食い違いを抱える、というものです。原則として、「文脈を共有し、個々のメッセージだけでなく、エージェントの行動の全記録を共有する」ことと、「行動には暗黙の判断が含まれる」ことを挙げています。これは1社の主張で、Anthropicの調査機能のように並行して調べる用途とは、前提が違うと読めます。
Anthropicの記事も、部下の指示が短いと、似た検索を重ねたり、仕事を取り違えたりした、と書いています。対策として、各部下に、目的、出力の形式、使う道具と情報源、仕事の境界を渡すこと、仕事の難しさに応じて部下の数を決める規則(単純な事実確認は1つのエージェントで3〜10回の道具呼び出し、比較は2〜4の部下、複雑な調査は10を超える部下)をプロンプトに入れることが、挙げられています。
選び方の目安
見立てです。ここまでの資料から、僕らは次のように整理しました。
| 仕事の性質 | 向く構成 |
|---|---|
| 1つの流れで、前の結果が次の入力になる | 単独のエージェント、または決まった順番の連鎖 |
| 独立した調べものが多い(比較、網羅的な調査) | リーダーと部下、並列実行 |
| 1つのコード全体にまたがる変更 | 単独、または部下は読み取りや確認の補助に限る |
| 長い作業で、途中の資料が文脈を埋める | 部下に任せて、要約だけ返させる(文脈の分離) |
つまずきやすい点
- 部下に渡す指示が短すぎる。上のとおり、重複や取り違えの原因になります。
- 部下の数を決めない。Anthropicの初期版は、単純な質問に50の部下を起動する失敗があったと書いています。
- 評価の方法。同じ入力でも、エージェントは別の経路で同じ結論に着くため、手順の一致では評価しにくい、とAnthropicは書いています。結果が正しいか、過程が妥当かを見る方法が要ります。
- 途中で止まったときの再開。長く動くエージェントは状態を持ち、誤りが積み重なります。Anthropicは、最初からやり直さず、止まった所から再開できる仕組みと、チェックポイントを用意したと書いています。
- 全文を、リーダー経由で渡す。大きな成果物は、部下が外部に保存して、軽い参照だけをリーダーに返す方法が、伝言ゲームによる劣化を減らすと紹介されています。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。内容は公式の記事と文書、およびCognitionの記事に基づきます。
- 90.2%は、Anthropicの社内評価の結果です。評価の中身(問題の数、採点の基準)は、読んだ記事では詳しく確認できていません。
- 4倍・15倍・7倍は、それぞれの記事や文書に書かれた、各社の使い方での数字です。自分の仕事での倍率は、測るまでわかりません。倍率は、仕事、モデル、構成で大きく変わります。
- Anthropicの記事は2025年6月、Cognitionの記事も2025年6月のもので、その後モデルや道具は変わっています。Claude Codeのエージェントチームは、実験的な機能と文書に明記されています。
- Anthropicの「Building effective agents」には、2024年12月以降に状況が変わったとの注記があります。
- 他社との優劣は、この記事からは言えません。
- 価格表の値は変わることがあります。
- 10月22日に読み直したのは、Anthropicの調査機能の記事、Claude Codeの3つの文書(SDKのサブエージェント、エージェントチーム、費用)、料金ページ、OpenAIの文書です。「Building effective agents」、Cognitionの記事、「Run agents in parallel」、モデル一覧は10月8日に読んだ内容のままで、読み直していません。
出典
- How we built our multi-agent research system(Anthropic、2025年6月13日、2026年10月22日確認)
- Building effective agents(Anthropic、2024年12月19日公開、2026年10月8日確認)
- Subagents in the SDK(Claude Code Docs、Anthropic、2026年10月22日確認)
- Run agents in parallel(Claude Code Docs、Anthropic、2026年10月8日確認)
- Orchestrate teams of Claude Code sessions(Claude Code Docs、Anthropic、2026年10月22日確認)
- Manage costs effectively(Claude Code Docs、Anthropic、2026年10月22日確認)
- Pricing(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月22日確認)
- Models overview(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月8日確認)
- Multi-agent orchestration(OpenAI Agents SDK、OpenAI、2026年10月22日確認)
- Don't Build Multi-Agents(Cognition、2025年6月12日、2026年10月8日確認)
更新履歴
-
2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
-
2026年10月22日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。
- 前:複雑な調査は「10以上」の部下を使う規則 → いま:「10を超える」部下を使う規則
- 前:単価は料金ページとモデル一覧の2か所で一致を確認 → いま:読み直したのは料金ページだけで、モデル一覧は10月8日のまま
