3行でいうと

  • 原典の第2条は、EUの外の会社でも、AIの出力がEU内で使われる場合などを適用対象にしている。
  • 原典では2026年8月2日から全面適用。2026年7月発効の改正で、高リスクAIの一部は2027年12月2日と2028年8月2日になった。
  • 違反の罰金は、禁止行為で最大3,500万ユーロまたは売上高の7%など。個別の判断は専門家に。

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、法令の原典と公式ページを読んでまとめたものです。法律の紹介であり、法的助言ではありません。自社が対象か、何をすべきかは、EU法に詳しい弁護士などの専門家に相談してください。

先に結論

前提:用語

日本の会社に関係しうる部分

原典の第2条1項は、規則の対象として、次の者などを挙げています。

見立てです。日本の会社が関係しうる場面は、たとえば次の3つだと思います。ただし、実際に対象かどうかは、事業の中身と契約によって変わります。

場面 関係しうる点(見立て)
EUの顧客向けに、AIを組み込んだサービスやチャットボットを提供する 提供者として、第50条の「AIと話していることの表示」などが問題になりうる
EUの拠点・子会社でAIを業務に使う EU内の配備者にあたりうる。AIリテラシーなど
自社で大きなAIモデルを作り、EUで提供する GPAIの提供者の義務(第53条)が問題になりうる

いつから何が適用されるか

原典の第113条は、2026年8月2日から適用すると定めたうえで、例外を置いていました。欧州委員会の説明では、2026年7月27日に発効した改正で、一部の日付が変わっています。

日付 内容 出所
2024年8月1日 規則が発効 欧州委員会のページ
2025年2月2日 第1章(総則)・第2章(禁止行為)が適用。AIリテラシー(第4条)を含む 原典第113条(a)、欧州委員会のページ
2025年8月2日 GPAIモデルの義務、ガバナンス規定、罰則規定などが適用 原典第113条(b)、欧州委員会のページ
2026年8月2日 規則の大部分が適用。第50条の透明性義務を含む 原典第113条、欧州委員会のページ
2026年12月2日 改正で追加された禁止(同意のない性的な画像・児童性的虐待コンテンツの生成)が適用。第50条(2)の機械可読な表示は、2026年8月2日より前に市場にあるシステムに限り、この日まで猶予 欧州委員会の公式ページ(AI Act Service Desk)
2027年12月2日 付属書IIIの高リスクAIの規則が適用 欧州委員会の公式ページ
2028年8月2日 付属書Iの法令(機械、玩具、昇降機などの製品)に組み込まれる高リスクAIの規則が適用 欧州委員会の公式ページ

見立てです。原典の第113条(c)は、第6条1項(製品に組み込まれる高リスクAI)に関する義務を2027年8月2日からとしていました。改正でこれが2028年8月2日になった、と読めます。付属書IIIの高リスクAIは、原典では2026年8月2日からでした。

リスクの4段階と、禁止行為

欧州委員会のページは、4段階に整理しています。

見立てです。社内でAIを使う多くの日本の会社にとって、まず確認しやすいのは、「採用の書類選考や社員評価にAIを使っていないか」(付属書IIIの雇用の分野)と、「EU向けにAI生成の文章や画像を公開していないか」(第50条)だと思います。

第50条:透明性の義務(要約)

原典の第50条は、次を定めています。

芸術・風刺・フィクションなどの作品の場合は、開示を作品の鑑賞を妨げない形にできる、という規定もあります。

罰金と、GPAIの義務

罰金(原典第99条)

  • 禁止行為(第5条)の違反:最大3,500万ユーロ、または企業の場合は前年度の全世界売上高の7%の、いずれか高い額。
  • 提供者・配備者などの義務(第50条の透明性義務を含む)の違反:最大1,500万ユーロ、または売上高の3%のいずれか高い額。
  • 当局への不正確な情報の提供:最大750万ユーロ、または売上高の1%のいずれか高い額。
  • 中小企業(スタートアップを含む)は、各項の金額と割合のうち、低いほうが上限。

罰則の具体的な運用は、加盟国が定める規則に委ねられている部分があります(第99条1項)。改正で罰金の規定が変わったかどうかは、確認できていません。

GPAIの提供者の義務(原典第53条)

  • 技術文書の作成と保管(AIオフィスや当局の求めに応じて提供)。
  • AIシステムにこのモデルを組み込む提供者への情報・文書の提供。
  • EUの著作権法に従う方針の整備。
  • 学習に使った内容の十分に詳しい要約の公開(AIオフィスの雛形に従う)。

オープンソースのライセンスで公開されるモデルは、(a)(b)の義務が免除されることがありますが、「システミックリスクのあるGPAIモデル」には免除が及びません(第53条2項)。2025年8月2日より前に市場に出たGPAIモデルは、2027年8月2日までに対応します(第111条3項)。GPAIモデルの提供者への罰金は、欧州委員会が科すもので、最大で売上高の3%または1,500万ユーロのいずれか高い額です(第101条)。

2026年7月の改正(AIオムニバス)で変わったこと

欧州委員会の公式ページは、次の点を挙げています。

AIリテラシーについては、原典の第4条は「十分なレベルのAIリテラシーを確保するための措置を、できる限り講じる」という書き方です。改正後の条文は、僕らは読めていません。

読み方・選び方

見立てです。確認の順番は、次のようにすると進めやすいと思います。

  1. EUに向けて提供している、またはEUで出力が使われるAIがあるか(第2条)。
  2. その中に、禁止行為や付属書IIIの分野(採用、与信など)に近いものがないか。
  3. 文章・画像・音声を生成して公開するなら、第50条の表示の義務。
  4. 日付は、必ず公式ページで最新のものを確認する。

見立てです。2026年7月の改正で、高リスクAIの猶予は延びましたが、禁止行為、AIリテラシー、GPAI、第50条の多くはすでに適用されています。「延期になったから、まだ何もしなくていい」とは言えない項目があると思います。

よくあるつまずき

見立てです。

気をつけること

出典

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