3行でいうと

  • 5つの地域は、拘束力の強さで大まかに分かれます。EUは法律(AI規則)で、中国は行政の規則で、義務を決めています。英国は、僕らが読んだ文書では、新しい規制機関も法律も当初は作らない方針でした。日本のAI推進法は、読んだ条文に罰則がありません。
  • 日付は動いています。EUは2026年7月にオムニバスの改正が出て、高リスクのAIの適用日が2027年12月2日などに延びました。米国は州ごとにばらばらで、連邦は大統領令で整理を求める段階です。
  • 比べるときは、「法律か指針か」「誰が対象か」「何を求めるか」「誰が執行するか」「日付は確定か」の5つの物差しが使えます。

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。各国の当局にも確かめていません。この記事は、欧州委員会、EUR-Lex、中国の国家インターネット情報弁公室、英国政府、内閣府、e-Govなどの公式の文書を、2026年10月16日に読んでまとめたものです。法律の話ですが、助言ではありません。

先に結論

比べるための5つの物差し

1枚の表

読めた範囲で、確認日(2026年10月16日)時点の内容です。

地域 中心の文書 型 日付(読んだもの) 対象
EU AI規則(Regulation (EU) 2024/1689) 法律。リスクの高さで義務が違う 発効 2024-08-01。大半は2026-08-02に適用。高リスクは2027-12-02、2028-08-02 EU内で提供する者。出力がEU内で使われる第三国の者も
米国 州法、連邦の大統領令14365 州が先に法律、連邦は整理を指示 大統領令 2025-12-11。州法は州ごとに別 州ごとに別
中国 生成AI暫定弁法、標識弁法 行政の規則(届出、評価、標識) 2023-08-15施行、2025-09-01施行 中国本土の公衆向けサービス
英国 白書、AI機会行動計画 既存の規制機関に任せる 白書 2023-03-29、行動計画 2025-01-13 分野ごとの規制機関の所管
日本 AI推進法、国の指針 推進の法律と指針 公布 2025-06-04、指針 2025-12-19 国、自治体、事業者、国民の責務

5つを、公式の文書で読む

EU。 欧州委員会のAI規則のページによると、リスクは4つに分かれます。許容できないもの(禁止)、高リスク、透明性のリスク、最小のリスクです。それぞれの中身の例は、僕らが読んだ範囲では確認していません。適用は段階的で、禁止とAIリテラシーは2025年2月2日、汎用目的AIモデル(GPAI)の義務は2025年8月2日、大半の規則と各国・EUの執行は2026年8月2日からです。

2026年7月には、「AIオムニバス」の改正規則(Regulation (EU) 2026/1744、2026年7月8日付、官報は7月24日)が出ました。欧州委員会のページは、7月27日に発効したと書いています。官報の前文には「公表から3日目に発効」とあり、7月24日公表なら27日になります。高リスクのうち、附属書IIIのものは2027年12月2日、附属書Iのものは2028年8月2日に延びました(元は附属書IIIが2026年8月2日)。性的な偽画像などを作るAIの禁止が2026年12月に加わる、とも書かれています。

適用範囲は、規則の前文によると、提供者がEUの中か外かを問わず、AIの出力がEUで使われる場合には、第三国の提供者・導入者にも及びます。罰則の金額は、読んだページに書かれていません。

米国。 連邦は、2025年12月11日の大統領令14365で、連邦統一の枠組みを目指し、州法に対する訴訟や資金の条件づけなどを指示しています。州は、コロラド、カリフォルニア、テキサス、ニューヨークなどが、それぞれ別の型の法律を作っています。僕らが読んだ範囲では、連邦の包括的なAI法は確認できていません。

中国。 「生成式人工智能服务管理暂行办法」は、国家インターネット情報弁公室など7つの機関が出し、2023年8月15日に施行されました。対象は、中国本土の公衆に生成AIのサービスを出すものです。学習データの適法性、個人情報の保護、世論形成力のあるサービスの安全評価とアルゴリズムの届出、生成した画像や動画への標識などを求めます。罰則は、サイバーセキュリティ法などの既存の法律に従い、法の定めがなければ警告や是正命令、深刻な場合はサービスの停止もあります。

「人工智能生成合成内容标识办法」は、2025年3月7日付で、2025年9月1日に施行されました。人に見える「顕式」の標識と、ファイルのメタデータに入れる「隠式」の標識の両方を求め、電子透かしは奨励とされています。アプリの配信プラットフォームには、提供者の標識に関する資料を確かめる義務があり、利用者は生成した内容を公開するときに申告します。

英国。 2023年3月29日の白書は、5つの原則(安全・堅牢性、透明性、公平性、説明責任、異議申立て)を示し、「当初は新しい法律を作る意図はない」「新しいAI規制機関は作らない」と書いています。原則は既存の分野別の規制機関が、自分の所管で適用します。2025年1月13日のAI機会行動計画も、この「イノベーション重視」の姿勢を維持すべきとし、規制機関への資金、サンドボックス、AI Safety Instituteの拡大を挙げます。特定のAI法案は提案しておらず、「フロンティアモデルをどう規制するかの明確化」が必要とだけ書いています。行動計画は「AI Safety Institute」と呼び、現在のAI Security Instituteのページは、自らを政府内の研究機関と説明し、規制機関とは書いていません(名前の変更の経緯は確認していません)。

日本。 AI推進法(令和7年法律第53号)は、2025年6月4日に公布されました。内閣府のページでは、AI戦略本部の規定を含め、全面施行は9月1日とされています(ページに年の記載はなく、2025年の9月1日と読んでいます)。内閣府のページでは、目的はイノベーションの促進とリスクへの対応と書かれています。条文の基本理念には、透明性の確保による不正利用・権利侵害の防止が入っています。事業者の責務(7条)は、活用して国や自治体の施策に協力する、という書き方です。国は、適正性の確保のために指針を整える(13条)ほか、権利侵害の事案を調べ、事業者などに指導・助言・情報提供をする(16条)とあります。僕らが読んだ条文に、罰則の規定は見当たりませんでした。この法律は、別の記事でも詳しく扱っています。

国の「適正性確保の指針」は2025年12月19日に本部決定、人工知能基本計画は2026年7月14日に閣議決定と、内閣府のページにあります。ただし、僕らは計画と指針の本文を読んでおらず、中身は確認できていません。

EUの日付の並びと、読んだ文書の関係
  • 2024年8月1日 発効。
  • 2025年2月2日 禁止(1〜8番)とAIリテラシー。
  • 2025年8月2日 GPAIモデルの義務、ガバナンス。
  • 2026年8月2日 透明性の規則(50条)を含む大半の規則、執行の開始。
  • 2026年12月2日(オムニバスで変更) 同意のない性的なディープフェイクとCSAMを作るAIの新しい禁止。すでに市場にある生成AIの提供者に、50条2項(機械が読める形での表示)への4か月の移行期間。
  • 2027年8月2日 各加盟国で、最低1つのサンドボックス。
  • 2027年12月2日(オムニバスで変更) 附属書IIIの高リスク。
  • 2028年8月2日(オムニバスで変更) 附属書Iの高リスク。

欧州委員会のページは、更新日が2026年8月3日です。AI Actサービスデスクのタイムラインは、改正が採択済みか案かを明示していません。官報の文書(2026年7月24日付)が最終の形のはずですが、末尾の約3分の1は読めておらず、発効条項の本文は僕らは読んでいません。

僕らの見立て:「型」で読むと、問いが立つ

ここからは、読んだ文書をもとにした僕らの見立てで、公式の評価ではありません。

  1. 「法律の名前」より「誰に義務が来るか」を見る。 EUは、AIの出力がEUで使われる場合に、域外の者にも届きうる、と前文にあります。中国は、中国本土の公衆に向けたサービスが対象です。日本のAI推進法は、事業者に「活用」と協力を求める書き方で、禁止や罰則を並べた形ではありません。同じ「AI規制」でも、義務の向かう先が違います。
  2. 日付は「いつ確かめたか」とセットで持つ。 EUは、2026年7月の改正で、適用日が動きました。米国のコロラドも、施行日が動いています。1年前の表は、そのままでは使えません。
  3. 指針や計画は、本文を読む。 日本の指針や英国の計画のように、法律ではない文書は、名前だけで中身を決めつけられません。僕らは、日本の指針の本文と、中国の標識弁法より後の新しい規則を読めていません。自社の判断には、原文を確かめる必要があります。

気をつけること

出典

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