3行でいうと
- 扱うのは、Stably, Inc. の「Orca」です。公式サイトの説明では「Agent Development Environment(ADE)」、公式リポジトリの説明では、複数のコーディングエージェントを動かして調整するアプリです。同名の別製品(クラウドセキュリティのOrca Security、船舶向けのOrca AI、3Dプリンタ用のOrcaSlicer)とは別物です。
- 入手先は公式サイトのダウンロードページ。デスクトップはmacOS、Windows、Linux。スマホ用の「コンパニオン」アプリ(iOSはApp Store、AndroidはAPK)もあります。
- 公式サイトは「Free and open source」と書いています。リポジトリのライセンスはMIT。Enterprise向けのページはありますが、読んだ範囲では価格の表示はありませんでした。
- OrcaはAIモデルそのものではありません。Claude Codeなどの「エージェントCLI」を、自分の契約やログインのまま動かす入れ物です。エージェント側の契約や料金は別です。
- コードやエージェントは、既定では自分のパソコンの上で動きます。利用状況の匿名データを送る仕組みがあり、アプリの設定で止められます(詳しくは04)。
この記事は、公式の資料を2026年10月23日に読んでまとめたものです。運営者はOrcaを入れています。ただしこの記事は、実際に使って確かめた記録ではなく、使い心地は書いていません。メニュー名やコマンドは公式の表記を写しています。公式ページは要約の形で取得したため、読めていない部分は「確認できていない」と書いています。
先に結論
- まず「どのOrcaか」。 公式サイトとリポジトリの説明をもとに、AI関連のツールとして扱うのは、Stably, Inc. の「Orca」です。理由と、候補にした別のOrcaは、この記事の「どのOrcaの話か」にまとめました。
- 対象は開発者。 公式のドキュメントは、Orcaを「ノーコードのツールではない」と書き、差分(diff)を読んでコミットを管理する人向けだと説明しています。プログラミングをしない人には、そのままでは向かないツールです(ここは公式の説明を僕らが言い換えたものです)。
- 無料で始められる。 公式サイトは無料でオープンソースと書いています。ただし、中で動かすエージェント(Claude Codeなど)の契約・料金は、それぞれの会社のものです。
- 最初に要るのは「git の作業用コピー」と「エージェントCLI」。 公式の最初の手順は、ローカルにあるgitのリポジトリを追加するところから始まります。
- 最初に決めること: ①どのリポジトリで試すか、②どのエージェントを使うか、③自分のパソコンで動かすか、遠隔のマシンで動かすか、④利用状況の送信を許すか、⑤正式版(stable)か先行版(RC)か、⑥試験的な機能を使うか、の6つです。
前提:用語をそろえる
- コーディングエージェント:コードを読み書きして、作業を進めるAIのツールです。Orcaの資料では、Claude Code、Codex、Cursor CLIなどを指します。
- CLI(コマンドラインのアプリ):黒い画面(ターミナル)で動かすアプリです。Orcaは、エージェントのCLIをターミナルの中で起動します。
- git / リポジトリ:ソースコードの履歴を管理する仕組みと、その置き場所です。
- worktree(ワークツリー):同じリポジトリを、別の場所に別の作業用コピーとして取り出す、gitの機能です。公式は、Orcaが1つの作業ごとにworktreeを1つ作る、と説明しています。コピーごとに、編集が混ざりません。
- IDE / ADE:IDEは、コードを書くための統合開発環境です。公式サイトは、Orcaを「Agent Development Environment(ADE)」と呼び、エージェントを動かすことを中心にした開発環境だと位置づけています。
- オーケストレーション:複数のエージェントの仕事を、ひとまとめに采配することです。公式のリポジトリは、Orcaを「AI Orchestrator」と呼んでいます。
たとえ話:厨房のコンロ
Orcaを、料理人(エージェント)が何人も立つ厨房だと考えてみます。worktreeは、料理人ごとの調理台です。同じ材料(リポジトリ)から、各自が自分の台で作るので、鍋がぶつかりません。Orcaは、全員の台が見える「ホール」で、誰が作業中で、誰が手を止めて待っているかが一覧になります。これは僕らのたとえで、公式の表現ではありません。
どのOrcaの話か(同名の別製品との区別)
「Orca」という名前は、読んだ範囲でも少なくとも5つのものに使われていました。うちAIのツールとして扱うのは1つだけです。
| 候補 | 公式の説明(要点) | このガイドで扱うか |
|---|---|---|
| Orca(Stably, Inc.、onorca.dev) | 複数のコーディングエージェントを並べて走らせ、1か所で見張る、無料でオープンソース(MIT)のアプリ。リポジトリの冒頭は「The AI Orchestrator for 100x builders」 | 扱う |
| Orca Security(orca.security) | クラウドの露出の把握、コンプライアンス、リスクの優先づけのためのクラウドセキュリティの会社。「Orca AI」はその製品群の中のAI機能の名前 | 扱わない(セキュリティ製品。利用者の挙げた用途と違う) |
| Orca AI(orca-ai.io) | 船舶向けのAIによる航行安全の技術。船上のシステムが、センサーとカメラで危険な対象を見つける | 扱わない(海運の製品) |
| OrcaSlicer(GitHub) | 3Dプリント用のスライサー(オープンソース、AGPL-3.0) | 扱わない(AIのツールではない) |
| GNOME Orca | Linuxの画面読み上げソフト。OrcaのInstallページが、CLIの名前を orca-ide にした理由として、これとの衝突を避けるためと書いている(GNOME Orca自体の公式ページは読んでいない) |
扱わない(AIのツールではない) |
選んだ理由: Stably, Inc. のOrcaが、AIエージェントを使うツールとして、公式のサイト、ドキュメント、更新履歴、リポジトリがそろっていて、Claude Code、Codex、Grok、Antigravityなど、ほかのAIのツールの名前が公式資料に並んでいるためです(これは僕らの判断です)。公式サイトでは、同じ会社のOrcaを「Cursorの代わりになるか」「ADEはIDEとどう違うか」といった質問の形で説明しています。
なお、公式のドキュメントやリリースノートの読んだ範囲では、提供の終了や、名前の変更、買収を知らせる記述は見つかりませんでした。ただし、スマホ用アプリの App Store へのリンクのURLには「orca-ide」という名前が使われています(ストアのページ自体は読んでいません)。
どこで使えるか
| 入口 | 公式の資料に書かれていること |
|---|---|
| デスクトップ(macOS) | ダウンロードページはApple SiliconとIntelのDMG。ドキュメントのファイル名は orca-macos-arm64.dmg と orca-macos-x64.dmg。Homebrewは brew install --cask stablyai/orca/orca |
| デスクトップ(Windows) | ダウンロードページは「Windows 10/11」のx64インストーラ。ドキュメントのファイル名は orca-windows-setup.exe。GitHubのリリースノート(v1.4.219)に、Windows on ARM向けのパッケージには、コマンドラインの orca がx64版で入っており、Windows 11 on ARMではエミュレーションで動くが、Windows 10 on ARMでは orca コマンドが動かない、という既知の問題が書かれている。ただし、更新履歴の1.4.219と「Install」ページには、WindowsのCLIがネイティブ版になったとも書かれており、この問題が今も当てはまるかは確認できていない |
| デスクトップ(Linux) | ダウンロードページは「Universal AppImage」。ドキュメントは、GitHub Releasesから .deb や .rpm も選べると書く。リポジトリのREADMEには、Arch LinuxのAUR(yay -S stably-orca-bin)も載っている。CLIの名前は、GNOME Orcaとの衝突を避けて orca-ide |
| スマホ(iOS) | App Store(公式サイトのリンクのURLは「orca-ide」) |
| スマホ(Android) | APKを直接ダウンロード。ドキュメントはGoogle Playには触れていない |
| ブラウザだけで使う | 読んだ範囲では、ブラウザ版の記述は見つからなかった |
スマホのアプリは、単独のエージェントの実行場所ではなく、デスクトップのOrcaにつないで、状況を見たり返事を送ったりする「コンパニオン」です。公式のドキュメントは、このコンパニオンを「beta」と書いています(03で詳しく書きます)。
どう入れて、最初に何が起きるか
公式の「Install」ページから読み取れる流れです。
- 公式サイトのダウンロードページから、OSに合うファイルを入れます。macOSならHomebrewでも入ります。
- 最初の起動で、ホームフォルダへのアクセスを求められます(リポジトリを追加するため)。
~/.claude、~/.codex、Ghosttyの設定が見つかれば、取り込むかどうかを聞かれます。- 何もない最初の画面が開きます。ここに最初のリポジトリを追加します。
自動更新は既定でオンで、正式版(stable)のチャンネルに沿います。先行版(RC)は新機能が先に出ます。RCを選ぶには、設定の「Check for Updates」を、Shiftを押しながらクリックします。常設のRC切り替えは、公式のドキュメントには書かれていません。古い版は、GitHubのReleasesから入手できます。
公式の「Install」ページには、システム要件の一覧や、gitやエージェントCLIを先に入れておく必要があるかどうかは、読んだ範囲では書かれていませんでした。一方、最初の手順のページ(「Your first 3-agent session」)は、前提として「ローカルのgitの作業用コピー」と「使うエージェントCLIと、その契約の認証情報」をはっきり挙げています。
無料でどこまでか
| 項目 | 公式の資料に書かれていること |
|---|---|
| アプリ本体 | 公式サイトは「Free and open source」。フッターは、macOS、Windows、Linux向けに無料でオープンソース、と書く。リポジトリのライセンスはMIT |
| 有料プラン | 公式サイトとドキュメントを読んだ範囲では、個人向けの有料プランや料金表は見つからなかった |
| Enterprise | 公式のEnterpriseページがある。チームへの導入支援(自分たちのネットワーク内での運用、使うエージェントや連携の制限の標準化)が書かれているが、価格の表示はない。問い合わせは「Get in touch」から |
| 中で動かすエージェント | 「Bring your own agent / subscription」。使う側がそれぞれの契約を持ち込む。Orcaは認証情報をそのままエージェントに渡す、と最初の手順のページに書かれている |
| 遠隔のマシン | 公式は、Orcaは管理されたVPSを売っていない、遠隔のマシンやクラウドのアカウントは使う側が用意して支払う、と書いている |
| Orcaのアカウント | 一部の機能(共有リンクの公開、スマホとつなぐRelay)にサインインが要る。アカウント自体に料金がかかるかは、読んだ範囲では確認できていない |
つまり、アプリは無料でも、エージェントの利用料(Claude CodeやCodexの契約、APIの料金など)は別にかかる、というのが公式の説明から読み取れる構図です。それぞれの料金は、各社の公式ページで確認してください。
データはどこに置かれるか
公式の「Ways to run Orca」から読み取れる、保存場所の整理です。
| 動かし方 | コードとエージェントが動く場所 | データの置き場所 |
|---|---|---|
| ローカルのデスクトップ(既定) | 自分のパソコン | 公式の表は、ファイルとエージェントの場所を「自分のデスクトップ」としている |
| SSH先 | SSHでつないだ遠隔のホスト | リポジトリ、ツール、認証情報は遠隔のホスト。パソコンにはUIが残る |
| Remote Orca Server(beta) | Orcaを動かす別のマシン | セッションと状態がサーバー側にある |
| Cloud VM(experimental) | 使い捨てのVM | 自分のクラウドのアカウント内 |
- ディスクのどこか。 Orcaのデータが置かれるフォルダの場所は、読んだドキュメントでは確認できませんでした。分かったのは、設定の中のショートカットの上書きが
~/.orca/keybindings.jsonに置かれること、プロファイルがJSONとSQLiteの2つの写しで持たれ、食い違えばどちらを使うかを選べることです。 - Orcaが読む、エージェントの側のフォルダ。 Claude Codeについて、公式は「Orcaは
~/.claudeを自動で拾う」と書いています。つまり、Claude Codeのログインは、一度、どのターミナルからでも済ませておけば足ります。 - 利用状況の匿名データ。 Orcaにはアカウントがなく、匿名のIDだけで、PostHog Cloud(米国リージョン)に送られる、と公式の「Privacy & Telemetry」に書かれています。プロンプトや、ファイルパス、リポジトリ名は送られない、とも書かれています。止め方は、04で書きます。ただし、同じドキュメントの別のページには、共有リンクやRelayのためのサインインが書かれていて、「アカウントがない」という記述との関係は、読んだ範囲では確認できていません。
最初に決めること
- どのリポジトリで試すか。 公式の最初の手順は、ローカルにあるgitのリポジトリを「Add Repo」で追加するところから始まります。大事なコードなら、まず小さなコピーで試すのが安全です(見立て)。
- どのエージェントを使うか。 Claude Code、Codex、Cursor CLIなど、すでに契約しているものから選びます。公式のドキュメントは、約40種類のエージェントを、一クリックで起動できる一覧に並べています(総数の明記は見つからず、一覧の行数から数えました)。さらに、そのほかのCLIも、ターミナルで起動できれば使える、と書いています。
- どこで動かすか。 まずは自分のパソコンで。遠隔のマシンで動かす方法は、あとから選べます。
- 利用状況の送信。 気になるなら、最初に止めておけます(04)。
- 正式版か先行版か。 先行版は新機能が先に出ます。迷えば、既定の正式版のままで十分です(見立て)。
- 試験的な機能を使うか。 公式は、一部の機能を「Experimental」や「beta」と書いています。たとえば、Chat UI、Orchestration、エージェントの休止(hibernation)は、設定の「Experimental」から有効にします。計算機を操作する「Computer use」はBetaと書かれています。
気をつけること
- 運営者はOrcaを入れています。ただしこの記事は、実際に使って確かめた記録ではなく、公式の資料を読んだ範囲のまとめです(使い心地は書いていません)。公式のドキュメントは更新が早く、更新履歴は、2026年10月だけでも何回も出ています。
- リリースの一覧(GitHub)と、更新履歴のページで、「最新」の版の表示が食い違っていました(前者はv1.4.219が最新、後者は1.4.237が10月21日)。取得の時点の差の可能性があり、読んだ範囲では理由を確認できていません。入れる前に、公式サイトで確かめてください。
- Androidアプリのバージョンも、ダウンロードページ(0.0.58)とリリースの一覧(プレリリースの0.0.52)で見え方が違っていました。
- 利用状況の設定の場所は、ドキュメントの間で食い違いがあります(04で書きます)。
- 名前が同じ別のOrcaや、同名のリポジトリは検索に出ます。入口は、公式サイトと公式リポジトリから入ってください。
- 公式が「beta」「Experimental」と書く機能は、仕様が変わる可能性があります。
- 法律や契約の解釈は、公式の規約や専門家に確認してください。この記事は助言ではありません。
出典
- Orca README(stablyai/orca、GitHub、確認日 2026-10-23)
- Orca(公式サイト、Stably, Inc.、確認日 2026-10-23)
- Download(Orca公式、確認日 2026-10-23)
- What is Orca?(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Install(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Your first 3-agent session(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Ways to run Orca(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Privacy & Telemetry(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Supported agents(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Troubleshooting & FAQ(Orca Docs、確認日 2026-10-23)
- Enterprise(Orca公式、確認日 2026-10-23)
- Changelog(Orca公式、確認日 2026-10-23)
- Releases(stablyai/orca、GitHub、確認日 2026-10-23)
- Orca AI overview(Orca Security、確認日 2026-10-23)
- Orca AI platform(Orca AI、確認日 2026-10-23)
- OrcaSlicer README(OrcaSlicer、GitHub、確認日 2026-10-23)