3行でいうと
- 募集の広告には、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じる決まりがあり(職業安定法5条の4)、厚生労働省は、募集主の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金の6つを示す必要がある、と説明しています。AIの下書きは、この6つがそろっているかを見ます。
- 性別を理由にした募集の差別は禁じられ、「男性歓迎」「女性向き」のような表示は、厚生労働省の資料で違法の例とされています。年齢にかかわりなく均等な機会を与える義務も、法律に書かれています。
- AIには、言い回しを整える仕事を任せ、条件は自分で決めて渡します。出てきた文は、法令と公式資料に照らして、人が読みます。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。僕らの考えは「見立てです」と書いた部分に分けました。
先に結論
- 表示は、正確さと最新さが決まりに入っている。 募集を行う者は、広告で募集の情報を出すとき、虚偽や誤解を生む表示をしてはならず、情報を正確かつ最新に保たなければならない、と条文にあります。
- 性別は、表現まで見られる。 職種名に性別を含めること、「男性歓迎」のような表現、一方の性に偏った写真やイラストが、厚生労働省の資料に違法の例として挙がっています。
- 年齢は、条文で原則が決まっている。 募集・採用では年齢にかかわりなく均等な機会を与える義務があり、例外は省令に列挙されています。例外に当たるかの判断は、僕らにはできません。
- AIの使いどころは、条件を決めたあと。 どんな人を、どんな条件で募るかは人が決めます。AIの下書きは、決まりに触れる表現が入っていないかを、人が確かめます。
募集文のチェック項目を、公式の資料から並べる
読んだ資料から、募集文を書くときに関係する4つの論点を表にしました。右の列は、僕らの見立てです。
| 論点 | 公式の資料に書かれていること | AIの下書きで起きやすいこと(見立て) |
|---|---|---|
| 表示の的確さ | 職業安定法5条の4は、広告等で募集の情報を提供するとき、虚偽や誤解を生じさせる表示を禁じる。募集を行う者は、情報を正確かつ最新に保つ | 実際にない待遇や、古い条件を、もっともらしく書く(ハルシネーション) |
| 性別 | 男女雇用機会均等法5条は、募集・採用で性別にかかわりなく均等な機会を与えるよう求める | 「女性が活躍」「男性中心」など、性別を含む言い回し |
| 年齢 | 労働施策総合推進法9条は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう求める | 「若手歓迎」「20代中心」のような言い回し |
| 身長・体重・体力、転勤 | 合理的な理由がない場合に、募集・採用の要件にすることが禁じられている措置として、身長・体重・体力と、転居を伴う転勤に応じることが挙がっている | 「体力に自信のある方」「全国転勤可」を、理由なく条件に入れる |
表示:「6つの情報」
厚生労働省のページは、労働者の募集広告には、募集主の氏名(名称)、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金の6つを示す必要がある、と説明しています。対象には、SNSなどを通じて直接募集する場合も含まれ、フリーランスの募集にも同じく6つの記載が必要とされています。
同じページのQ&Aには、書き方の細かい点が出ています。
- 住所は、ビル名、階数、部屋番号まで書きます。
- 連絡先は、電話番号、メールアドレス、または自社サイトの専用の問い合わせフォームのリンクのいずれかです。
- 会社サイトの募集要項へのリンクだけでは、誤解を招く可能性があるため、広告自体に6つを書く必要がある、とされています。
- 業務内容、就業場所、賃金は、労働基準法などと同じ詳しさまでは求められません。ただし、誤解を生じない程度の記載は必要です。「時給1500円~」のように書く例や、就業場所を複数示して「応相談」とする例が挙がっていますが、個別具体的に判断されるとあります。
このページには、5条の4に違反した場合の罰則の記載は見つかりませんでした。罰則や行政の扱いは、この記事では確認していません。
見立てです。AIの下書きを見るときは、6つが本文の中にそろっているか、会社サイトへのリンクだけで済ませていないか、賃金が誤解を生む書き方になっていないか、の順で確かめるのが分かりやすいと思います。AIに「この募集文に、6つの情報が入っているか、項目ごとに挙げてください」と頼む使い方もできますが、その答えも人が目で確かめます。
性別:表現と写真まで
厚生労働省の「男女均等な採用選考ルール」には、禁じられる性別差別の5つの類型が出ています。5つは、募集・採用の対象から男女いずれかを排除すること、条件を男女で異にすること、能力・適性の判断方法や基準を男女で異にすること、男女いずれかを優先すること、求人情報の提供で男女を異に扱うこと、です(資料の要約で読んだものです)。
募集の表示について、資料は次のような例を挙げています。
- 職種名に性別を含めること(「ウエイター」「〇〇レディ」など)。
- 「男性歓迎」「女性向きの職種」のような、性別による優遇を示す表現。
- 一方の性に偏った写真やイラスト。
例外もあります。業務上、一方の性でなければならない職務は、例外になりえます。ただし、一方の性に適していると考えられているだけでは当たりません。女性の割合が4割を下回る雇用管理区分で、女性を対象にしたり有利に扱ったりする措置(ポジティブ・アクション)も認められる、とされています。
間接差別として、合理的な理由がない場合に禁じられる措置のうち、募集・採用に関係するものが、資料に2つ挙がっています。身長・体重・体力を要件にすること、転居を伴う転勤に応じることを要件にすること、です。AIが「体力に自信のある方」「転勤可能な方」を、業務の実態と関係なく入れてしまうことは、ありそうだと思います。これは見立てです。
年齢の例外:省令に列挙された場合
労働施策総合推進法9条は、事業主に、厚生労働省令で定める場合に、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう求めています。
条文の取得で読めた省令(施行規則1条の3)の、例外の列挙を、僕らの言葉で要約します。法令名は、取得した画面の条文番号から読み取ったもので、画面に名称の表示はありませんでした。
- 定年のある事業主が、定年を下回る年齢を条件に、期間の定めのない契約の労働者を募集・採用する場合。
- 法令で就業が制限されている業務について、募集・採用する場合。
- 合理的とされる場合として、若年者の長期継続勤務による能力開発、技能・知識の継承、芸術・芸能、60歳以上などの雇用促進が挙がっていました。
各項目の細かい条件は、読んだ範囲では確認できていません。また、省令は、この例外で募集・採用をするときも、職務内容や必要な適性・能力・経験などを、できる限り明示するよう努めることを求めています。
僕らは、この条文を要約で読んだだけです。「若手歓迎」のような言い回しが、年齢制限の表示に当たるか、例外に当たるかは、読んだ範囲では判断できません。必要なら、都道府県労働局やハローワークに聞いてください。
応募書類・面接の質問を、AIに作らせるとき
求人票の次に、応募書類や面接の質問票をAIに頼む場面もあります。厚生労働省の「公正な採用選考」のページは、応募者の適性と能力だけを基準にすることを求め、採用選考で配慮すべき事項として、「など14事項」を挙げています(これらに限られない、とも書かれています)。そのうち、本人に責任のない事項と、本来自由であるべき事項にあたる11項目は、次のとおりです。
- 本人に責任のない事項。 本籍・出生地、住宅の状況、家族、生活環境・家庭環境。
- 本来自由であるべき事項。 宗教、人生観・生活信条、思想、購読する出版物や愛読書、支持政党、尊敬する人物、労働組合の加入や社会運動。
ページには、応募者から指摘された不適切な質問は、家族に関するものが多くを占める、とあります。面接の雰囲気を和らげるつもりで聞いてしまう、という説明も添えられています。
見立てです。アイスブレイクの質問をAIに頼むと、出身、家族、愛読書のような質問が入ることは十分ありえます。質問票を作るときは、この11項目を頼みの文に書いて除外させ、できた質問を人が見直します。
AIの規約と、「選考」の線引き
選考の判断そのものをAIに任せる場合は、求人票を書く場合とは別の話になります。2社の利用規約を読みました。
- OpenAI。 利用ポリシーは、10月16日に読んだ版では2025年10月29日発効と表示されていました。10月22日に読み直すと、2026年11月20日発効(更新履歴は2026年10月21日、前の版は2025年10月29日)と表示されていました。どちらの日付の版でも、雇用を含む重要な分野で、人のレビューなしに重要な判断を自動で行うことを禁じる趣旨の項目が読めます。11月20日は10月22日より後で、現行版か予告かは、読んだ範囲では分かりません。
- Anthropic。 利用ポリシーの発効日は2026年11月12日と表示されていました。10月22日より後の日付で、現行版か予告かは、読んだ範囲では分かりません。この版では、候補者の選別、順位付け、不採用の判断などの助言にAIを使う場合、その分野の資格や経験のある人が内容を実質的に確認すること、対象になる人にAIの利用を伝えることが、高リスク利用の要件として書かれています。各国の法律が追加の要件を定めている場合は、そちらを優先する、ともあります。
求人票の下書きが、この条項の対象になるかどうかは、どちらの資料にも明確には書かれていません。この記事では、確認していません。
募集文をAIに頼む手順(見立て)
ここは、公式の資料を、募集文づくりに当てはめた僕らの見立てです。
- 条件は、自分で決める。 業務内容、就業場所、賃金、勤務時間、必要な経験を、先に文で書きます。AIには、その条件を使って文章にするよう頼みます。
- 決まりに触れる言い回しを、プロンプト(頼みごとの文章)に書く。 「性別、年齢を条件にする表現、性別を含む職種名を使わない」と書きます。ただし、これはAIが守ってくれる保証にはなりません。
- 6つの情報を、人が確かめる。 募集主の名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金です。
- 身長・体重・体力、転居を伴う転勤の条件は、理由を書けるものだけ残す。 理由が書けなければ外します。
- 写真とイラストも見る。 文章だけでなく、添える画像が、一方の性に偏っていないかを見ます。
- 古くなったら直す。 条文は、情報を最新に保つよう求めています。募集が終わった票や、条件を変えた票は、下書きのまま残さないようにします。
気をつけること
- この記事は、AIで求人票を作って確かめた記録ではありません。手順と例文は、公式の資料から組み立てた見立てです。
- WebFetchは要約を返す仕組みなので、条文や資料の原文を逐語で確かめたわけではありません。条文は、e-Govの条文取得の画面を要約で読んだものです。この記事の言い回しは、僕らが言い換えたものです。
- 取り上げたのは、募集の表示、性別、年齢、応募書類での配慮事項です。労働条件の明示、障害者や外国人の雇用、最低賃金などは、扱っていません。
- 年齢の例外、「若手歓迎」などの言い回しの扱い、5条の4違反の罰則は、確認できていません。
- 厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」は、ページを開きましたが、各章はPDFで、本文は読んでいません。
- 資料には、2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、事業主の義務になる、という記述もありました。10月22日の時点で、この日付はすでに過ぎています。施行後の扱いは確認していません。この記事では扱っていません。
- Anthropicの利用ポリシーは、10月22日にも発効日が2026年11月12日と表示されていて、日付が先のものでした。OpenAIの利用ポリシーも、10月22日の版は2026年11月20日発効の表示でした。どちらも、現行版か予告かは、確認できていません。
- これは法律の助言ではなく、公式資料を読んだ範囲の一般的な情報です。個別の募集文の適法性は、都道府県労働局、ハローワーク、専門家に確かめてください。
出典
- 職業安定法 第五条の四(e-Gov法令API、10月22日確認)
- 労働者の募集広告の表示事項(厚生労働省、10月22日確認)
- 男女均等な採用選考ルール(厚生労働省、10月22日確認)
- 労働施策総合推進法 第九条(e-Gov法令API、10月22日確認)
- 労働施策総合推進法施行規則 第一条の三(e-Gov法令API、10月22日確認)
- 採用選考時に配慮すべき事項(厚生労働省 公正な採用選考、10月22日確認)
- Usage Policy(OpenAI、10月22日確認)
- Usage Policy(Anthropic、10月22日確認)
更新履歴
-
2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
-
2026年10月22日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。
- 前:募集要項へのリンクだけでは、誤解を招く可能性がある → いま:そのため、広告自体に6つを書く必要がある
- 前:禁じられる性別差別の5つの類型の中身は未確認 → いま:男女いずれかを排除する、条件を男女で異にする、などの5つが書かれている
- 前:OpenAIの利用ポリシーは2025年10月29日発効と表示 → いま:2026年11月20日発効と表示。現行版か予告かは不明
- 前:セクハラ防止措置の義務化は2026年10月1日から → いま:その日付はすでに過ぎている。施行後の扱いは未確認
