3行でいうと

  • 報道によると、OpenAIの年間換算売上は「500億ドルに近い」で、9月末ごろから出回っていた「700億ドルに近い」とは約200億ドルの差があります。
  • 差の主因は、Anthropicの数え方に合わせて直接比較しようとした試みだと報じられています。Anthropicはクラウド提携先(AWSやGoogle Cloud)経由の売上を含め、OpenAIは含めません。
  • 「年間換算売上(ARR)」は会計基準で決まった数字ではありません。何を足し、何を引くかは、会社ごとの決めです。比べるときは、数え方をそろえたかを先に確かめます。

この記事では、OpenAIやAnthropicの内部の数字を見ていません。この記事は、2026年10月12日までに公開された報道と、公式の会計・開示の文書を読んでまとめたものです。投資や取引をすすめる記事ではありません。

先に結論

前提:用語をそろえる

何が報じられたか(時系列)

次は報道の整理です。各社の記事を僕らが読んだ範囲で、数字は報道の記載です。

日付 出来事 出どころ
2026年7月 Anthropicの年間換算売上が650億ドルを超えた CNBC(8月17日付)。ReutersとTechCrunchも引用
9月29日 OpenAIの年間換算売上が「700億ドルに近づく」と報道 Axios(TechCrunch経由)
10月8日 OpenAIが投資家に伝えた年間換算売上は「500億ドルに近い」と報道 Financial Times(TechCrunchとReuters経由)
10月8日 NVIDIA、Oracle、CoreWeaveなどAI関連株が下げた CNBCの見出し。個々の下げ幅は、僕らが一次の記事で確認できていません

総額と純額で、数字はどう変わるか

次は、僕らの計算例です(実際の契約の数字ではなく、仕組みを見るための仮の数字です)。

顧客がクラウド経由で、ある月にAIの利用料を100万ドル払うとします。クラウド提携先が20万ドルを取り、AI会社には80万ドルが入ります。

数え方 月の売上 12倍した年間換算
総額(顧客の支払い全額を売上、提携先の取り分は費用) 100万ドル 1,200万ドル
純額(自社に入る取り分だけを売上) 80万ドル 960万ドル

同じ取引でも、年間換算は20%違います。Axiosは、会計学者の説明として、「顧客が100ドルをクラウド経由で払うと、Anthropicは100ドル全額を売上にして、提携先の取り分は費用にしうる」と伝えています。

Reutersの分析では、Anthropicは提携先を通した売上1ドルのうち約16%を提携先に払っています。ただし、OpenAIの500億ドルと700億ドルの差は約29%(200億÷700億)あり、16%より大きいので、差の全部が提携先の取り分だけで説明できるとは限らない、というのが僕らの見立てです。どこまでが何の違いかは、公開された文書からは分かりません。

「本人か代理人か」を決める会計の考え方

国際会計基準(IFRS)の第15号は、顧客に渡す商品やサービスごとに、自社が本人か代理人かを判断すると書いています。見るのは、顧客に渡す前にその商品・サービスを支配しているかです。

  • 本人と判断されると、顧客の支払いの全額を売上にして、関連する費用も別に計上します(総額)。
  • 代理人と判断されると、手数料や取り分だけを売上にします(純額)。
  • 判断の手がかりとして、①顧客への履行の主たる責任を負っているか、②在庫リスクを負っているか、③価格を決める裁量があるか、が挙げられています。

日本の会計基準にも、同じ考え方があります。企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」と、企業会計基準適用指針第30号(47項に3つの指標)です。

僕らは、米国基準の該当部分は読んでいません。また、OpenAIとAnthropicが個々の契約でどう判断しているかは、公開された文書で確認できていません。この表は「考え方の説明」で、2社の会計処理が正しいかどうかの判断ではありません。

ARRは、そもそも何の数字か

数字を読むときの確認点

見立てです。僕らがまとめた、報道の数字を読むときのチェックで、公式な基準ではありません。

  1. どの月の数字を12倍したか。 8月か9月か、1か月分か、四半期の4倍か。
  2. 総額か純額か。 提携先経由の売上がどちらで入っているか。
  3. 誰が出した数字か。 会社自身の発表か、関係者の話か、投資家向け資料か。
  4. 比べる相手と同じ数え方か。 会社どうしを並べるなら、数え方をそろえる必要があります。
  5. 数え方は途中で変わっていないか。 変わったなら、変更後の数字と前の数字は、そのままは比べられません。

今回は、700億ドルと500億ドルが、同じ会社の同じ時期の数字でも、数え方を変えるだけで並ぶ、という例です。「どちらが本当か」ではなく、「何を足し引きした数字か」を確かめるのが先です。

気をつけること

出典

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