3行でいうと
- 優秀な人材「スマート・クリエイティブ」を惹きつけ、力を出せる環境を作ることが最重要
- 細かく指示するより、大きな裁量と、明確な目標・データによるフィードバックを与える
- 採用は一番大切な仕事で、最高の候補者だけを採り、妥協しない
- 完璧を待たず出荷して市場の反応を見て改善する、という速いサイクルを重視する
向いている人
組織づくりや採用、チーム運営に関わる人。創造的な人材が働く環境を考えたい経営者や管理職、スタートアップの関係者。
読む意味
ネット時代の大企業が、人と文化をどう設計してきたかを内側の視点で知れます。自社の採用や意思決定のやり方を見直す際の比較材料になります。
読むときの注意
Googleの経営陣自身が語る内部の証言であり、事例は成功の側から描かれています。
どんな本か
Googleの元CEOエリック・シュミットと、プロダクト担当の元上級副社長ジョナサン・ローゼンバーグが、経営陣として学んだ企業経営とマネジメントの要点をまとめた本です。共著者として、アラン・イーグルも名を連ねています。2014年に出版されました。
著者らが繰り返し使う言葉が「スマート・クリエイティブ」です。専門知識と行動力、ビジネス感覚を併せ持ち、既存の枠にとらわれず新しい発想を実行に移せる人材を指します。インターネットで情報の流通コストが下がり、こうした人材がどの企業でも活躍できる時代には、上から管理するより、人材を惹きつけて自律的に力を出せる環境を整えるほうが競争力につながる、というのが基本の主張です。
日本語版の目次は、文化、戦略、人材、意思決定、コミュニケーション、イノベーションの6つの主題で、「はじめに」と「おわりに」が付きます。書評では、勤務時間の20%を自分の関心のあるプロジェクトに使える「20%ルール」、採用を個人ではなく採用委員会が判断する仕組み、四半期ごとの目標と主要な結果指標(OKR)を全員が見える形にする運用などの事例が紹介されています。この紹介は、書評ブログなどの二次資料にもとづく部分があり、本文の細部までは確認できていません。
中身の柱
- 文化:自分たちのスローガンを信じる
- 戦略:あなたの計画は間違っている
- 人材:採用は一番大切な仕事
- 意思決定:「コンセンサス」の本当の意味
- コミュニケーション:とびきり高性能のルータになれ
- イノベーション:原始スープを生み出せ
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概要
『How Google Works――私たちの働き方とマネジメント』は、Googleの元CEOでありAlphabet Inc.の元会長を務めたエリック・シュミット(Eric Schmidt)と、Google製品担当シニアバイスプレジデントを務めたジョナサン・ローゼンバーグ(Jonathan Rosenberg)が、Googleの経営陣として学んだ企業経営とマネジメントの要諦をまとめた一冊である。共著者としてアラン・イーグル(Alan Eagle)も名を連ねている。2014年に米国で出版され、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにも掲載された。
本書のタイトルにある「スマート・クリエイティブ」という言葉は、著者らが本書の中で繰り返し用いる独自の用語であり、専門知識と実務的な行動力、そしてビジネス感覚を併せ持ち、既存の枠組みにとらわれずに新しい発想を実行に移せる人材を指す。著者らは、こうした人材をいかに惹きつけ、力を発揮できる環境を整えるかが、これからの企業経営における最重要課題であると位置づけている。
英語版は2014年9月23日にグランド・セントラル・パブリッシングから刊行された(英語版ウィキペディアによれば304ページのハードカバー)。日本語版は2014年10月に日本経済新聞出版社から刊行され(書評ブログbookvinegarによれば発刊は10月9日、376ページ)、訳者は土方奈美である(Amazon.co.jpの書誌表記による)。2025年8月4日には、日本経済新聞出版から日経ビジネス人文庫版(A6判・464ページ)が出ており、日経BOOKプラスの目次には、冒頭にラリー・ペイジによる序文が置かれている。
本の構成
本書はまず、インターネットの普及によって情報の流通コストが限りなくゼロに近づき、優秀な人材(著者らはこれを「スマート・クリエイティブ」と呼ぶ)がどの企業でも自由に活躍できる時代になったという時代認識を提示することから始まる。続いて、こうした時代においては、伝統的なトップダウン型の管理体制よりも、優秀な人材を惹きつけ、彼らが自律的に力を発揮できる環境を整えることの方が競争優位につながるという主張のもと、採用、意思決定、コミュニケーション、イノベーションの促進といったテーマごとにGoogleの具体的な経営手法が紹介される。日経BOOKプラスの文庫版の目次は、序文(ラリー・ペイジ)、はじめに「最前列で学んだこと」、「文化 自分たちのスローガンを信じる」、「戦略 あなたの計画は間違っている」、「人材 採用は一番大切な仕事」、「意思決定 『コンセンサス』の本当の意味」、「コミュニケーション とびきり高性能のルータになれ」、「イノベーション 原始スープを生み出せ」、おわりに「想像を超えるものを想像しよう」である。
主要な内容
著者のエリック・シュミットは1955年4月27日生まれのコンピュータエンジニア出身の経営者で、サン・マイクロシステムズやノベルの幹部を経て、2001年にGoogleのCEOに就任し、その後Alphabet Inc.の会長を歴任した人物である。英語版ウィキペディアによれば、プリンストン大学で工学の学士号を、カリフォルニア大学バークレー校で1979年に修士号、1982年に博士号を取得し、1983年にサン・マイクロシステムズに入り、1997年から2001年まではノベルのCEOを務めた。Googleでは2001年8月にCEOとなり、2011年まで務め、Alphabetのエグゼクティブ・チェアマンは2015年から2017年までである。本書の日本語版の紹介文は、2014年の刊行時点のシュミットを「グーグル現会長で前CEO」としている。共著者のジョナサン・ローゼンバーグは、日本語版の紹介文では「前プロダクト担当シニア・バイスプレジデント」とされる人物である。
本書の中心的な主張は、知識労働が高度化した現代の企業においては、経営陣が細部まで指示を出すマイクロマネジメントよりも、優秀な人材を採用し、彼らに大きな裁量を与えた上で、明確な目標とデータに基づくフィードバックの仕組みを整えることの方が、より大きな成果を生み出すというものである。著者らは、Googleが少人数のチーム単位で意思決定を行い、階層を極力少なくすることで、大企業になっても意思決定のスピードを維持しようとしてきた経緯を、具体的な社内エピソードとともに紹介している。
書評ブログ(bookvinegar)によれば、本書は、創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが「ユーザーを中心に考える」ことを最重要の原則とし、優秀なエンジニアを大量に採用して自由を与える戦略をとったと述べる。同ブログは、いまも「従業員の半分以上はエンジニアでなければならない」という大原則が守られていること、2003年に取締役会へ提出された事業計画が、財務予想も市場調査も詳細な製品ロードマップも予算もなく、「20世紀に学んだことのほとんどは間違っている」という信念だけで書かれていたことを紹介している。マネジャーには最低7人の直属の部下を持たせて、マイクロマネジメントを抑える仕組みも紹介されるという。書評ブログ(bookcierge)は、戦略の章が、単なる成長ではなく「スケール化」、すなわち「速く、大きくなる」ことを求めると要約し、人材の章については、変化のジェットコースターを選ぶ「ラーニング・アニマル」の採用を重視すると整理している。
具体例
本書で紹介される代表的な事例が、Googleの技術者に勤務時間の20%を自分の関心のあるプロジェクトに自由に使わせる「20%ルール」である。書評ブログ(思考と読書【お金・健康・人間関係 編】)によれば、20%ルールは、失敗を許容し限界に挑んだ経験を評価する環境の例として紹介され、成功例にはGoogleニュースやGoogleマップの交通情報が挙がっているという。また、同ブログは、採用では最終判定をマネジャー個人ではなく採用委員会が行い、全社員が採用に関わることや、「Aクラスの人材がAクラスを呼ぶ」好循環を重んじることを紹介している。別の書評ブログは、自分より優秀な人物、倫理観があり率直な人物を採用し、最高の候補者のみを採って妥協しないという原則に注目している。
意思決定の章については、書評ブログ(bookcierge)が、各社員が四半期ごとに目標と主要な結果指標(OKR)を設定し、イントラネットで公開して全員が互いの仕事を把握できるようにする仕組みを紹介している。同ブログによれば、会議室にはデータ表示用とビデオ会議用の2台のプロジェクターがあり、「私が思うに」ではなく「ちょっとこれを見てください」と語って説得するやり方が根づいているという。経営トップが率先して実践し、こうした透明性がコミュニケーションの章の「とびきり高性能のルータになれ」にもつながる、と整理されている。また、思考と読書のブログは、広告の品質の問題を「ムカつく」と指摘したラリー・ペイジに対し、担当外のエンジニア5名が週末に自発的に解決した逸話を、文化の例として挙げている。
実践への応用
本書で紹介される、優秀な人材に大きな裁量を与えて自律性を引き出すという経営手法は、知識労働の比重が高まっている多くの業種の企業にとって、従来型の管理統制型の組織運営を見直す際の参考になる。特に、業務時間の一部を自由な発想のための時間として確保するという発想は、大企業のイノベーション部門だけでなく、中小企業やスタートアップが社員の創造性を引き出す仕組みを設計する際にも応用できる考え方である。
書評ブログ(bookcierge)は、イノベーションの章の要点を、完璧を待たず、プロダクトをつくって出荷し、市場の反応を見て改善し、再び出荷する、そのサイクルを最も速く繰り返せる企業が勝つという考え方だとまとめている。思考と読書のブログによれば、情報はデフォルトで公開され、取締役会の資料まで全社員に共有されること、「ピザ2枚で足りる」規模のチームで運営することも、人材の力を解き放つ環境設計の例として挙げられている。
位置づけ・評価
本書は、世界有数のテクノロジー企業であるGoogleの経営陣自身の手による内部からの証言という点で高い関心を集め、刊行後にビジネス書のベストセラーとなった。同時期に刊行された『ワーク・ルールズ!』(Googleの人事責任者ラズロ・ボックによる著作)と並んで、Googleという企業の組織運営とマネジメント哲学を知るための代表的な文献として、経営学の分野で広く参照されている。
著者のエリック・シュミットは、Google在任中に検索広告事業を中核とする収益モデルを確立し、同社を世界有数の企業へと成長させた経営者として知られており、本書はその経営手腕の背景にある考え方を、2014年の刊行時点で会長の立場から自ら言語化した記録としても位置づけられている。書評ブログ(bookcierge)は、本書の発見として、Googleが成長段階の企業に起こりがちな衰退の要因(階層化、部門間の壁、保守化)を避け、スマート・クリエイティブが喜んで出社できる環境を設計した点を挙げ、ドラッカーの語る優れたオーケストラのような組織の21世紀版と評している。