3行でいうと
- 紙面のバージョンと日付は、PHPの公式のお知らせと合っていました。 PHPは2026年10月21日に8.5.12/8.4.27/8.3.36/8.2.35を出し、CVE-2026-109618とCVE-2026-109619を直したと書いています。公式には、完全な回避策はなく、更新だけが安全な選択だと書かれています(各バージョンのリリース告知の英語の文を訳しました)。
- 「CVSS 9.2」は、PHPが付けたCVSS v4.0の点数です。 NVDには、NIST側のCVSS 3.1として9.8(109618)と8.1(109619)も載っています。点数が違うのは、物差しが違うからです。
- 「約70%」「150万ホスト」「20年」「三大陸」は、紙面の意味では、僕らが読んだ公式の文書で確認できませんでした。 70%は、Wizのブログの題名と結びでは「影響を受ける」割合として、要約ではPHPが動かしているサイトの割合として出てきます。OpenAIのブログ本文には70%がなく、OpenAIの開発者コミュニティの投稿は、PHPの利用割合として推定70%と書いています。150万はNSAの文書ではなく、ある調査会社の記事に出る別の意味の数字でした。「20年」は、Califのページに、昔の攻撃手法の系譜の話として出てきますが、今回の欠陥の年数としては書かれていません。オランダ政府が、予防のために自分たちのサイトを止めたことは、政府の公式の文書で読めました。
- 「AIで見つけた」は、発見した側の文書に書かれていますが、PHP自身のお知らせとGHSAには書かれていません。 OpenAIは、Califが「GPT-5.6 Sol」で見つけ、Wizも独立に見つけたと書き、Wizは自社の使ったAIモデルを挙げ、CalifはLLMを調査の何段階かで使ったと書いています。
- 自分でできることは、PHPのバージョンの確認と、契約先への確認です。 レンタルサーバーでは、会社が本体を直す形が多く、会社ごとの告知を見る必要があります。紙面の二つ目の事件(LiteLLM、tensorlake)は別の話で、LiteLLMだけが公式の告知を読めました。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、2026年10月24日〜25日に読んだ公開資料と報道の整理です。セキュリティの話は、自分だけの判断で済ませず、契約先のホスティング会社とPHPの公式の最新情報で確認してください。攻撃の手順は書きません。この記事は、投資や法律の助言ではありません。引用は短く、意味を変えない範囲にしています。公式のページは要約の形で取得したため、「書かれていない」と言い切らず、「読んだ範囲では見つからなかった」と書いた所があります。
先に結論
- 日付・CVE番号・修正版は、PHPの公式のお知らせで確かめられました。 紙面の書き方で変わりません。
- 数字は、誰の言い方かで読みます。 9.2はPHP、9.8と8.1はNIST、70%はWizやOpenAIの開発者コミュニティの投稿、150万は調査会社の記事です。同じ「記事の数字」でも、元がばらばらです。
- 「特定の構成下で」は、半分だけ合います。 PHPは、Webのリクエストを処理するPHPの環境はどれも危険がある(原文は「at risk」)とし、危険がいちばん高いのはmod_phpと書きます。公式は「特定の構成だけ」とは書いていません。
- 紙面の外にも更新があります。 10月23日に、PHPは、今回の修正版では直らない別のRCE(CVE-2026-115560)を挙げ、回避の設定を案内しました。
- レンタルサーバーの人は、PHPの設定画面の番号だけで安心しないでください。 修正版かどうかは、契約先の告知で確かめる必要があります。
前提:用語をそろえる
- CVE:脆弱性に付く共通の番号です。今回は2件(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)です。
- CVSS:脆弱性の深刻さを0〜10で表す点数です。版(v3.1、v4.0)によって計算が違います。
- リモートコード実行(RCE):外から、サーバーで任意の命令を動かされることです。
- 認証なし(未認証):ログインしていない相手でも、という意味です。
- パッチ:欠陥を直す更新です。PHPでは、修正版の番号(8.5.12など)のことです。
- 緊急リリース:定期の更新とは別に、急いで出す更新です。
- セキュリティアドバイザリ(GHSA):GitHubに載る、脆弱性の公式の説明です。GHSAから始まる番号が付きます。
- CNA:CVE番号を付ける権限を持つ組織です。今回はPHP Groupです。
- SAPI(mod_php、PHP-FPMなど):PHPがWebサーバーとつながる方式の名前です。
- サポート終了(EOL):開発元が、もう修正を出さない状態です。
- バックポート:新しい版の修正を、古い版に移して当てることです。
- サプライチェーン攻撃:ソフトを作る、配る、使う流れの途中に悪意のあるものを混ぜる攻撃です。
- 一次情報と二次情報:会社や政府の自分の文書が一次情報、報道や整理が二次情報です。
読み方の物差し
| 確かさ | 意味 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 公式に書かれている | PHP、政府機関、会社の自分の文書に、その数字や文がある | 文書と場所を示せる |
| 発見者・会社の言い分 | 発見した会社や調査会社が、自分のブログで書いている(公式の機関の文書ではない) | 会社の名前がある |
| 報道だけがある | 報道が伝えているが、公式の文書は読めていない | 報道の名前と日付がある |
| 確認できず | 僕らが探した範囲では見つからない、またはページを読めていない | 取得できなかった、または語がない |
紙面の数字を、元の文書と照らす
確かめた元資料:php.netのニュース、2026年のお知らせ一覧、ChangeLog、リリース一覧(取得時点では8.5.11までの表示で、修正版は載っておらず、修正版の根拠には使っていません)、サポート対象の表、PHPのGHSA 2件、CVE記録とNVD(どちらも機械向けのデータ)、NSAの発表、オランダのNCSCと政府の発表、英国NCSC、カナダのCyber Centre、CERT-EU、NCSC-NLのGitHub、JPCERT/CCとJVN、OpenAI、Wiz、Califの公開文書、LiteLLMの告知、Google Cloudの公式ブログ。報道は、BleepingComputer、Help Net Security、Decrypt、Nextgov、Newcastle Heraldなどです。読めなかったもの:CISAの公式ページ(取得に失敗)、オーストラリアのASDの公式ページ(取得が許可されていない)、NVDとCVE.orgの画面(データのAPIで読んだ)、tensorlakeのnpmのページ、tensorlake自身の告知(見つからず)、フランスの公式の文書(見つからず)。
| 紙面の言い方 | 元の文書に書かれていること | 確かさ |
|---|---|---|
| 10月21日、PHPが緊急リリース | php.netのお知らせに、2026年10月21日付で8.5.12/8.4.27/8.3.36/8.2.35の公開がある。前日(10月20日)に、21日14:00 UTCの予告も出ている。なお、ChangeLogの8.5.12の見出しは「22 Oct 2026」で、お知らせとは1日ずれる | 公式に書かれている(ChangeLogだけ日付が違う) |
| CVE-2026-109618、CVE-2026-109619 | PHPのお知らせとGHSA、CVE記録に、この2件がある。題は「RCE via OOM corruption」と「RCE via stale global state」 | 公式に書かれている |
| 通称PHP2Shell | PHPのお知らせ、GHSAにはこの名前がない。WizのブログとCalifのページが、この名前を使っている | 発見者の言い方(PHPの文書には書かれていない) |
| CVSSはいずれも9.2 | GHSAとCVE記録に、CVSS v4.0で9.2(Critical)とある(PHPが付けた点数)。NVDにはNISTのCVSS 3.1も載り、109618が9.8、109619が8.1 | 公式に書かれている(版と付けた人が違う) |
| 特定の構成下で認証なしRCE | PHPのお知らせは、認証なしのRCEにつながり得ると書き、Webのリクエストを処理するPHPの環境はどれも危険がある(原文は「at risk」)とする。危険は、mod_phpがいちばん高い。両方のGHSAに、構成ごとの違いが細かく書かれている | 一部だけ合う(「特定の構成だけ」とは書かれていない) |
| 修正版は8.5.12/8.4.27/8.3.36/8.2.35 | お知らせ、GHSA、CVE記録、NVD、JPCERT/CCのすべてで同じ | 公式に書かれている |
| 複数の企業がAIで発見と公表 | OpenAIのブログは、CalifがGPT-5.6 Solを使って重大な欠陥を見つけ、Wizも独立に両方を見つけた、と書く。Wizは、自社のツールとGemini 4 Argon、GPT-5.6 Solを使ったと書く。CalifのページはLLMを調査の何段階か(回避方法の相談、ソースの確認、見つけたパターンの一般化)で使ったと書き、特別な環境や、一般に使えないモデルは使っていないとも書く。PHPのお知らせとGHSAには、AIの記載がない | 発見者の言い方(PHP側の文書では確認できず) |
| 十数年(見立てでは20年) | Wizは、本文で10年以上あったと書き、要約では数十年(decades)と書く。Califのページは、2004年のメモリ制限の脆弱性の「兄弟」を探すところから始めたと書き、今回の最古の経路としてPHP 5.4.0を挙げる。「20年」は、Califのページに、LLMが「twenty-year-old」の攻撃手法から始めるとは限らない、という系譜の文脈で出てくる語で、今回の2件のコードが20年ある、という文ではない。Decryptは、OpenAIの社長が14年と言ったと伝える。PHPの文書、CVE記録、OpenAIのブログには年数の記載が見つからなかった | 発見者・報道の言い方/「20年」は系譜の文脈で出る語 |
| 影響は既知のウェブサイトの約70% | Wizの題名と結びに「70% of the Internet」が影響を受ける、という形で出て、要約には、PHPが世界のサイトの70%を動かす、という利用割合の形で出る。影響を受けるサイトの割合を測った方法は書かれていない。OpenAIのブログ本文には70%の記載がない。OpenAIの開発者コミュニティの投稿(10月21日)には、推定70%のサイトで使われる、という利用割合の形で出る。PHP、NSAの文書には、この割合がない | 発見者・投稿の言い分(公式の文書では確認できず) |
| 三大陸の政府系サイトが一時オフライン | オランダ政府の公式の発表で、Overheid.nl、MijnOverheid.nl、DigiDを予防のために止めたと読める。NCSC.nlも自分のサイトを止めたと書く。それ以外は報道だけ。Newcastle Heraldは、欧州とアジアの政府サイトがオフラインになり、オランダとフィンランドが予防で止めたと書き(アジアの国名はなし)、オーストラリアの政府機関のサイトにも影響が出ていると書く。Decryptは、フィンランド、オランダ、フランスが止めたと伝える。フィンランドとフランスは、公式の文書を取得できていない。「三大陸」という言い方は、公式の文書には見つからなかった | 一部だけ公式(オランダ)/他は報道だけ |
| NSAが脆弱な150万ホストへ即時パッチを呼びかけ | NSAの発表は2026年10月21日付で、PHPを使う組織は修正に備えること、すぐ更新できないなら、完全に対策できるまでオフラインにすること、を書く(英語の文を訳しました)。ホストの数は書かれていない。150万は、調査会社の記事(Shodanのデータ)で、バージョンが見えるホストの総数の意味で出てくる。なお、Nextgovは、NSA、FBI、CISAが呼びかけたと伝えるが、僕らが公式の文書を確認できたのはNSAだけ | NSAの文書にこの数字はなし |
| 同じ週にLiteLLM 1.107.0に窃取コードとローダー | LiteLLMの公式の告知に、PyPIの1.107.0とコンテナの複数のタグが対象、とある(2026年10月21日) | 公式に書かれている |
| npmのtensorlake@0.5.144の悪性版 | セキュリティ会社Socketが、0.5.144を10月8日に公開された悪性版と書く。tensorlake自身の告知は見つからず、npmのページも読めなかった。「同じ週」という書き方は、Socketの日付だと合わない | 報道・会社の言い分(公式は確認できず) |
① PHPの公式のお知らせは、何と言っているか
php.netの2026年のお知らせ一覧に、10月の項目が並んでいます。
- 10月20日の予告。重大な脆弱性が2件あり、いずれもCVSS v4.0で9.2であること、10月21日14:00 UTCに公開予定であることを書き、詳細が出たり、悪用の証拠が出たりしたら早めに出す権利を持つ、と書いています(訳)。
- 10月21日のセキュリティ勧告。8.5.12/8.4.27/8.3.36/8.2.35が2件の重大な脆弱性を直し、すべてのPHP利用者に、直ちに更新することを強く勧める、と書いています(訳)。
- 誰が危ないか。公式の見出しは「Who is at risk」で、Webのリクエストを処理するPHPの環境がすべて危険がある、としています。例には、PHP-FPM、Apacheのmod_php、php-cgi、FrankenPHP、LiteSpeedが例に挙がります。危険がいちばん高いのはmod_phpで、認証なしのリクエストが、アプリのコードより前に攻撃を起こせることを示した、と書きます。
- 二つの脆弱性の中身(公式の言い方)。109618は、メモリ不足の処理で、リクエストの内部データが初期化の途中のまま中断され、後の片付けが無効なデータを有効として扱い得る、という話です。109619は、リクエストごとの内部の状態が、元のメモリが解放された後も残り、同じワーカーの後のリクエストが使い得る、という話です。
- 回避策。完全な回避策はなく、更新だけが安全な選択だと、各バージョンのリリース告知に書かれています(訳)。更新できない場合の設定は、セキュリティ勧告に列挙されていますが、危険を減らすだけで、安全にはしない、とあります(訳)。
- 古い版。8.1以前は、PHPプロジェクトからの更新がありません。ただ、PHP 7.4、8.0、8.1には、ソースから作る人や、長期サポートの業者を使えない人のために、最小限のバックポートが出ています。
- PHP 8.2の期限。8.2.35の告知に、8.2は2026年12月31日にサポート終了、とあります(訳)。
GHSAの記載(109618)。影響を受けるのは、8.2が8.2.35より前、8.3が8.3.36より前、8.4が8.4.27より前、8.5が8.5.12より前です。mod_phpで認証なしのRCEが確かめられたと書き、PHP-FPMは、ソースの分析では影響を受け得るが、完全な攻撃は確認されていない、FrankenPHPは、おそらく影響を受けるが未確認、と書いています(訳)。
GHSAの記載(109619)。セッションのアップロード進捗の機能(session upload progress)は、PHPの既定で有効で、session_start()がなくても関わり得る、PHP 8.5では、致命的エラー時のバックトレース(fatal_error_backtraces)の機能が確認済みの経路、と書いています。
ChangeLogの8.5.12。GHSAの2件の番号と「Avoid state corruption via bailout」という説明が載っていて、僕らが読んだ範囲では、その行にCVE番号は書かれていません。
② 点数の読み方:9.2、9.8、8.1
- PHPのCNAの点数。GHSAとCVE記録に、CVSS v4.0で9.2(Critical)、ベクトルは「AV:N/AC:H/AT:P/PR:N/UI:N/…」とあります。ネットワークから、権限なし、ユーザーの操作なしで、ただし攻撃の難しさは高く(AC:H)、追加の条件がある(AT:P)、という読み方です。
- NVDの記録。NISTのCVSS 3.1は、109618が9.8(Critical)、109619が8.1(High)です。PHPのCVSS v4.0(9.2)も、「Secondary」として並んで載っています。
- CISAの評価。NVDの記録の中に、CISAコーディネーターの役割で載るSSVCの欄があり、悪用は none、自動化は no、技術的な影響は total でした。この欄の時刻印は2026年10月21日です。NVDの記録そのものは、10月23日に更新されています。
- つまり、紙面の「CVSSはいずれも9.2」は、PHPが付けたv4.0の点数としては合っています。ただ、点数は、版と付けた人で変わるので、「どの機関のどの版か」を添えて読む数字です。
③ 「AIで発見」「十数年・20年」「約70%」
- AI。OpenAIの公式ブログは、CalifがPatch the Planetの取り組みの中でGPT-5.6 Solを使って重大な欠陥を見つけ、Wizが独立に両方を見つけた、と書きます(訳)。Wizのブログは、見つけた側の4人の研究者の名前と、Wiz Atlas、Gemini 4 Argon、GPT-5.6 Solの使用を書き、AIは攻撃の確認を各バージョンに合わせる作業も助けた、と書きます。Califのページは、調査の最初にLLMに相談し、ZendMMの確保の挙動の確認や、起点の追跡にもLLMやエージェントを使い、見つけたパターンをLLMにSKILL.mdへ一般化させた、と書き、特別な環境や一般に使えないモデルは使っていない、とも書いています。同じページには、どのモデルも簡単な指示だけで全部のバグを見つけられるわけではない、という趣旨(英語で「at least for now」と付く)もあります。PHPのGHSAの謝辞は、報告者の名前(GitHubのユーザー名)を並べるだけで、AIの記載はありません。CVE記録は、報告者としてCalif.ioのRyan、Wiz、発見者としてOpenAIと書いています。
- 年数。Wizは、本文で脆弱なコードが10年以上あったと書き、要約では数十年と書きます(訳)。Califのページは、2004年にStefan Esserが見つけたメモリ制限の脆弱性の「兄弟」を探すところから始めた、と書き、今回の経路のうち、見つけたいちばん古いものはPHP 5.4.0からだと書いています。「20年」という語は、LLMは、20年前の攻撃手法から始めるとは限らない、という文脈で出てきます。今回の2件のコードが20年前からある、という文ではありません。5.4.0の公開時期はCalifのページに書かれていないので、「何年前」とはここでは書きません。この記事では、この点をCalifのページを読み直して確かめましたが、取得ツールの要約を通して読んでおり、ページの全文を一字ずつ確かめたわけではありません。同じCalifの別の記事(2026年5月)の題名に「21年前の脆弱性」とありますが、その記事は、php2shellとの関係を書いていません。「人間のレビューをすり抜けた」という言い方も、僕らが読んだ公式の文書には出てきません。
- 70%。Wizの題名と結びは、インターネットの70%が影響を受ける、という言い方で、要約は、PHPが世界のサイトの70%を動かす、と書きます(訳)。後者はPHPの利用の割合で、今回の修正前の版が動いているサイトの割合を測ったものではありません。Wizは、影響を受ける割合を測った方法を書いていません。OpenAIのブログの本文には、70%という数字が出てきません。OpenAIの開発者コミュニティの投稿(10月21日)は、PHPが推定70%のサイトで使われる、と、利用の割合として書いています。この二つは、別の文書です。Nextgovは、PHPの割合を「サーバー側の言語が分かるサイトの約70%」とし、出典としてW3Techsを挙げています(報道)。BleepingComputerは、「75〜80%」と、出典を付けずに書いています。数字がそろっていないので、僕らは「約70%が影響を受ける」とは書きません。
- 範囲の読み違いに注意。PHPのGHSAが「影響を受ける」と書くのは8.2〜8.5の、修正前の版です。8.1以前は「更新が出ない版」と別に書かれています。Wizは、PHP 5.4までさかのぼる版が影響を受ける、NCSC-NLは、PHP 5以降のすべての版が影響を受け得る、と書きます。PHPのお知らせは、古い版が影響を受けるかどうかの判定を、僕らが読んだ範囲では書いていません。
④ 「150万ホスト」「NSA」「政府系サイトのオフライン」
- NSAの発表。2026年10月21日付の「NSA Advisory: PHP Updates」は、PHPを使う組織が修正に備えること、すぐ更新できないなら、完全に対策できるまでシステムをオフラインにすること、近く詳しい案内を出すこと、を書いています(訳)。ホストの数は書かれていません。
- 150万の出どころ。調査会社CybelAngelの記事(2026年10月21日付)は、Malloryが10月20日に公表したShodanの集計を元にして、インターネットに出るPHPのホストは約224万、バージョンが見えるのは約150万、そのうち公式の修正が出ない系統にいるのが883,717(約59%)と書いています(訳)。数えているのはホストで、組織やサイトではない、とも書いています。「脆弱な150万ホスト」という意味ではありません。他の数字も、報道に出ています。Nextgovは、Palo Alto NetworksのUnit 42の数字として、ネットに出ている2,260万以上、BleepingComputerは、VirusTotalの数字として、510万以上、と伝えます。数え方が違うので、数字は比べられません。
- 政府系サイトのオフライン。オランダ政府の公式の発表(2026年10月21日)は、予防のためにいくつかのサイト(Overheid.nl、MijnOverheid.nl、DigiD)を止めた、と書きます。同じ発表は、いまのところ悪用されている兆しはない、とも書いています(訳)。オランダのNCSCは、自分たちのWebサイトも予防のために止めた、と書いています。止めたのは、悪用された後ではなく、修正の前の予防の措置です。オーストラリアは、ASDの声明として、政府のサイトに影響が出ているかもしれない停止を把握している、という内容が、報道(Newcastle Herald、10月22日付)に出ています。ASDの公式ページは、僕らは読めていません。Newcastle Heraldは、欧州とアジアの政府サイトがオフラインになったと書き、国名はオランダとフィンランドだけです。Decryptは、フィンランド、オランダ、フランスが政府サイトを止めたと伝えています。フィンランドとフランスは報道だけで、公式の文書を見つけられませんでした。「三大陸」という数え方は、僕らには報道からも確かめきれませんでした。英国のNCSCは、公式の注意喚起で、更新できない場合はオフラインも検討するよう書いていて、サイトが止まったかどうかは書いていません。
- 悪用の状況。公式の文書の書き方は、時点で違います。オランダのNCSCは、悪用の兆しは見ておらず、公開の確認用コードはある、と10月21日に書きました。カナダのCyber Centreは、10月21日の注意喚起(10月23日更新)に、いまのところ能動的な悪用は確認していないが、状況は急に変わり得る、と書いています。確認用コードについては、オープンソースの報道によれば公開されているものがある、という形で書いています。報道では、BleepingComputerが、CloudflareのCTOが「早い攻撃」を見たと伝え、Help Net Securityが、Amazonが10月17日に1件の試みを観測したと伝えています(どちらも報道で、僕らは元の文書を読んでいません)。「悪用されている」とも「されていない」とも、僕らは断定できません。
⑤ 自分のPHPのバージョンの確かめ方
PHPの公式のマニュアルに書かれている方法です。
- PHPのコードで確かめる。
phpversion()は、PHPのバージョンを文字列で返す関数で、同じ情報が定数PHP_VERSIONにもある、とマニュアルにあります。 - コマンドで確かめる。
php -vは、SAPI名とPHPのバージョンを表示する、とマニュアルの例にあります。表示に(cli)と出るのは、コマンドライン用のPHPです。Webで動くPHPとは、別の版が入っていることがあります(僕らの注意)。 - 見るのは、Webで動くPHPです。マニュアルは、
-cなどで、CLIが別のphp.iniを使えることを書いています。Webの側は、サーバーの管理画面や、契約先の告知で確かめるほうが確実です。 - 番号だけで判断しない。LinuxのOSの配布元は、PHPの更新の前に修正を受け取っていて、自分の版に修正を移して配っていることがあります(PHPのお知らせが、ディストリビューションの更新を確認するよう書いています)。そのときは、番号が「8.3.36」のようにならなくても修正済みのことがあり得ます(これは僕らの推測で、PHPの文書には書かれていません)。ディストリビューションや契約先の告知で確認してください。
- 確認用のページを置いたままにしない。バージョンを出すだけのページを作った場合は、確認したら消してください(一般的な注意で、PHPの文書には書かれていません)。
⑥ どのバージョンに上げるか(公式のリリースに書かれたもの)
| いまのPHP | 公式に書かれていること |
|---|---|
| 8.5系 | 8.5.12以降へ。8.5系は、サポート対象の表で、セキュリティ修正が2029年12月31日まで |
| 8.4系 | 8.4.27以降へ。セキュリティ修正が2028年12月31日まで |
| 8.3系 | 8.3.36以降へ。セキュリティ修正が2027年12月31日まで |
| 8.2系 | 8.2.35以降へ。ただし、2026年12月31日にサポート終了と書かれている。移行の計画も必要 |
| 8.1以前 | PHPプロジェクトからは更新が出ない。ディストリビューションや長期サポートの業者の修正を確認するか、サポート中の版へ。7.4、8.0、8.1には、ソースから作る人向けの最小限のバックポートが出ている |
- 「どの系に移るか」は、PHPの今回の文書は決めていません。アプリ(WordPressなど)の対応状況を見て、決めることになります(一般的な注意)。
- Wizは、問題はPHP本体にあり、アプリには依存しない、と書いています。アプリやプラグインの更新だけでは、PHP本体の修正の代わりにならない、という読み方になります。
- JPCERT/CC(2026年10月22日付)は、PHP Groupの案内として、「十分なテストを実施の上、速やかに修正済みバージョンを適用」するよう書き、あわせて、侵害の痕跡がないかの確認も勧めています。
⑦ レンタルサーバーの場合
PHPのお知らせは、Linuxのディストリビューションと長期サポートの業者は先にパッチを受け取っているので、更新された配布物を確認するよう書いています(訳)。レンタルサーバーでは、本体は契約先が管理するので、契約先の告知を見ます。僕らが読めた3社の公式の告知を、例として挙げます(他社は読んでいません)。
- さくらインターネット(2026年10月22日付、10月23日17時30分に追記):10月21日22時30分から、会員関連機能などで予防的な緊急メンテナンスをして、10月23日の追記の時点で、すべて終わっている、と書いています。さくらのレンタルサーバーは、提供するPHPに必要な修正を適用した(サポート終了版も、提供中のものは修正)、さくらのVPSは、サービス側がPHPを使っておらず影響なし、利用者がVPSの中で動かすPHPは自分で更新、と書いています。告知には、修正後のバージョン番号と、利用者がバージョンを確かめる手順は書かれていませんでした。
- ロリポップ!(2026年10月22日付):PHP 8.2〜8.5には公式の修正版を、7.4、8.0、8.1には、開発元がサポート終了版向けに出した修正コードを当て、公式の修正がない5.3〜7.3は、公式の修正内容をもとに自社で作って検証し、当てた、と書いています。全バージョンで
session.upload_progressを無効にした、PHPを8.2以降に切り替える手順(管理画面の「PHP設定」)、サイトの再開後に、表示、問い合わせフォーム、ファイルのアップロードなどの動作を確かめること、も書かれています。8.1以下はサポート終了済みで、今回の対策は応急的だ、とも書かれています。 -
KAGOYA(2026年10月24日12時40分の表示):レンタルサーバーは、PHP 7.4と8.1〜8.5系の修正版への更新が完了、と書きます。一方で、共用/マネージド専用サーバーなどの恒久対応は調整中で、管理画面が停止中とあります。FLEXは、OSが利用者の管理なので、自分での対応が必要、と書かれています。
-
会社によって、対応の範囲も、利用者にお願いする作業も違います。自分の契約のプラン名で、公式の告知の該当の行を読んでください。告知は更新されます。
- 公式のPHPのお知らせは、
session.upload_progress.enabled=0の設定について、ini_set()や.user.iniに頼らず、php.iniやFPMのプール、サーバーの設定で行うよう書いています(訳)。レンタルサーバーでは、自分でその設定を触れないことが多いので、契約先が設定したかどうかを、告知で確かめるのが現実的です(これは僕らの読み方です)。
⑧ 紙面の外の更新:10月23日の追加情報
- PHPは10月23日付の「情報提供の注意」で、まれな構成(設定とアプリのコードの珍しい組み合わせ)でだけ成り立つ、別のRCEの経路(CVE-2026-115560)があると書きました(訳)。成り立つ条件の細かい中身は、ここには書きません。
- PHPは、実際には起きにくい構成なので、定期のバグ修正の更新で扱い、次のリリースで、完全な勧告を出す、と書いています(訳)。それまでは、
session.upload_progress.enabled=0を勧めています。10月21日にこの設定をしていれば、追加の作業は要らない、とあります。 - カナダのCyber CentreとCERT-EUも、10月23日に更新して、同じ内容を書いています。
- 今回の修正版(8.5.12など)で、この三つ目は直らない、と読めます。
⑨ 同じ週のLiteLLMとtensorlake
- LiteLLM(公式の告知を読めた)。LiteLLMの告知(2026年10月21日、最終更新は同日20時30分UTC。10月23日付の追記もあり、以前の想定の一部が不正確だった、と読める)は、10月21日の10時台(UTC)に、リリース用の仕組みへの許可されていない変更が始まり、11:39〜11:40 UTCにPyPIへ悪性版がアップロードされ、13:23 UTCまでに削除された、と書いています。対象は、PyPIの
litellm==1.107.0と、Docker HubとGHCRのv1.107.0、latest、main-latest、main-stableのタグです。PyPIでは約1時間43分(告知の冒頭の要約は約2時間)出ていた、と書き、それ以前の版は安全で、1.106.2などにピン留めするよう案内しています(訳)。中身は、認証情報を盗み、遠隔の命令を動かす仕組みを持つマルウェア、と書かれています。確認する手順と、変えるべき認証情報の一覧も、告知に書かれています。PyPIのlitellmのページは、僕らが読んだ時点で、最新を1.106.2と表示していました。 - tensorlake(公式は読めず)。Socketのブログは、npmのtensorlake 0.5.144が、2026年10月8日にnpmに出た侵害された版で、インストールのときに動き、認証情報を盗む、と書いています。tensorlake自身の告知は見つからず、npmのページも読めませんでした。tensorlakeのGitHubのセキュリティ情報の一覧は、9月28日付の5件だけで、この件の記載はありませんでした。Socketの日付どおりなら、紙面の「同じ週」にはなりません。
- 二つとも、PHPの欠陥とは別の「サプライチェーン攻撃」で、直し方は別です。パッケージを使っている人は、ここに挙げた公式の告知(LiteLLM)か、提供元の告知で、自分の使うバージョンを確かめてください。
共通する読み方
- 点数は、版と付けた人を添えます。9.2、9.8、8.1は、どれも「公式」の数字ですが、物差しが違います。
- 「影響を受ける割合」と「使われている割合」を分けます。70%は、Wizの要約とOpenAIの開発者コミュニティの投稿ではPHPの利用の話で、Wizの題名と結びでは影響の話になっていました。
- 数字の意味を、元の文書で確かめます。150万は、NSAの呼びかけの数ではなく、調査会社の記事の中の数字でした。
- 予防の停止と、被害を分けます。オランダ政府の公式の発表は、予防の措置で、悪用の兆しはない、と書いていました。
- 日付は、文書の更新で変わります。ChangeLogの日付が、お知らせと1日ずれる例もありました。
気をつけること
- 数字と文は、2026年10月24日〜25日に読んだ資料のものです。PHPの追加の勧告、修正版、各社の告知は、この後に変わる可能性があります。
- CISAの公式ページは、取得に失敗して、読めていません。オーストラリアのASDの公式ページも、取得が許可されず、読めていません。NVDとCVE.orgの画面は、表示用のページが読めなかったので、データのAPIで読みました。
- PHPのGHSAの謝辞に出るGitHubのユーザー名と、どの会社が対応するかは、この記事では確かめていません。Wizが「Google傘下」であるという紙面の書き方は、Google Cloudの公式ブログ(2026年3月11日)に、Googleが買収を完了し、WizのチームはGoogle Cloudに加わりWizのブランドは残す、と書かれていて(訳)、確認できました。ただし、WizのPHP2Shellのブログは、所有関係を書いていません。
- Wiz、Calif、OpenAIは、発見した側で、自社の仕事を書く立場です。年数、AIの役割、影響の大きさは、発見者の言い方として読みました。PHP自身の文書は、AIの役割を書いていません。
- 数字の確認用のコード、攻撃の手順は、僕らは扱いません。公式のお知らせとGHSAが書く、防御側の情報だけを書きました。
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。バージョンの確かめ方は、PHPのマニュアルに書かれた方法で、実機では試していません。
- この記事は、投資や法律の助言ではありません。契約先のホスティング会社とPHPの公式の最新情報で、確認してください。
出典
- News Archive 2026(The PHP Group、2026年10月、確認日2026年10月25日)
- PHP news(The PHP Group、確認日2026年10月25日)
- PHP 8.x ChangeLog(The PHP Group、確認日2026年10月25日)
- PHP Releases(The PHP Group、確認日2026年10月25日。取得時点では8.5.11までの表示で、修正版は載っていなかった)
- Supported Versions(The PHP Group、確認日2026年10月25日)
- GHSA-w8hw-w9fx-j79w RCE via OOM corruption(php-src、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- GHSA-6wmf-4rv5-p3rp RCE via stale global state(php-src、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- CVE-2026-109618(CVE Program、レコードのAPI出力、確認日2026年10月25日)
- CVE-2026-109619(CVE Program、レコードのAPI出力、確認日2026年10月25日)
- CVE-2026-109618(NVD、API出力、確認日2026年10月25日)
- CVE-2026-109619(NVD、API出力、確認日2026年10月25日)
- NSA Advisory: PHP Updates(NSA、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- Aantal websites Rijksoverheid preventief offline na kwetsbaarheden PHP(オランダ政府、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- NCSC: ernstige kwetsbaarheden in PHP(オランダ政府、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- Critical security issue affecting PHP(英国NCSC、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- AL26-026 Critical vulnerabilities impacting PHP(カナダ Cyber Centre、2026年10月21日、10月23日更新、確認日2026年10月25日)
- Security Advisory 2026-018: Critical PHP Vulnerabilities(CERT-EU、2026年10月20日初版、10月23日更新、確認日2026年10月25日)
- NCSC-NL/php2shell(NCSC-NL、GitHub、確認日2026年10月25日)
- PHPにおける複数の脆弱性に関する注意喚起 JPCERT-AT-2026-0033(JPCERT/CC、2026年10月22日、確認日2026年10月25日)
- JVNVU#99905564 PHPにおける複数の任意のコードが実行可能な脆弱性(JVN、2026年10月22日、10月23日更新、確認日2026年10月25日)
- Patch the Planet: global response coordination as agents uncover critical vulnerabilities(OpenAI、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- OpenAI models help researchers uncover critical PHP security flaws(OpenAI Developer Community、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- Welcoming Wiz to Google Cloud: Redefining security for the AI era(Google Cloud、2026年3月11日、確認日2026年10月25日)
- PHP2Shell: AI uncovers critical RCE vulnerabilities affecting 70% of the Internet(Wiz、2026年10月21日、発見者側のブログ、確認日2026年10月25日)
- php2shell(Calif Research、発見者側のページ、確認日2026年10月25日)
- Finding and Exploiting a 21-Year-Old Vulnerability in PHP(Calif Research、2026年5月1日、別件の記事、確認日2026年10月25日)
- PHP manual: phpversion(The PHP Group、確認日2026年10月25日)
- PHP manual: Command line options(The PHP Group、確認日2026年10月25日)
- PHPの脆弱性への対応状況について(さくらインターネット、2026年10月22日付、10月23日追記、確認日2026年10月25日)
- PHPの脆弱性への対応に伴うメンテナンス完了と経緯のご報告(ロリポップ!、2026年10月22日付、確認日2026年10月25日)
- PHPの脆弱性に関する当社サービス状況(KAGOYA、2026年10月23日付、10月24日時点の表示、確認日2026年10月25日)
- Contained: Oct 21, 2026 LiteLLM release v1.107.0 Compromised(LiteLLM、2026年10月21日、確認日2026年10月25日)
- litellm(PyPI、確認日2026年10月25日)
- tensorlakeai/tensorlake セキュリティアドバイザリ一覧(GitHub、確認日2026年10月25日)
- TensorLake npm SDK Compromised in ChainDrop Shai-Hulud Credential-Stealing Attack(Socket、セキュリティ会社のブログ、確認日2026年10月25日)
- PHP ships emergency patches for critical PHP2Shell flaws(BleepingComputer、2026年10月21日、報道)
- php2shell PHP vulnerabilities patched(Help Net Security、2026年10月21日、報道)
- Who Found the PHP Bug That Made Governments Unplug Their Websites? ChatGPT, Of Course(Decrypt、2026年10月21日、報道)
- US agencies urge fixes for programming language flaws putting millions of web systems at risk(Nextgov、2026年10月21日、報道)
- Government cybersecurity website hit in global flaw(Newcastle Herald、2026年10月22日、報道)
- 2.24M Internet-Facing PHP Hosts, 59% on Versions With No Fix Coming(CybelAngel、2026年10月21日、調査会社の記事)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
