3行でいうと

  • 「関係者によると」は、情報源が名前を出さない形です。読んだ基準では、これは「最後の手段」とされ、使うには条件があります。ただし、書いてあるだけでは、その条件が守られたかは分かりません。
  • 「と報じられた」は、他の報道を引いた形のことが多く、元の取材をした人は別にいます。同じ話を何社が書いても、元が同じなら、確認が増えたことにはなりません。
  • 読む側の問いは4つです。誰が言ったのか、何人が言っているのか、公式の資料はあるか、元はどこか。

この記事は、公式の文書を読んでまとめたもので、取材したり、確かめたりしたものではありません。読んだ基準は、英語圏の3つの組織と、日本のファクトチェック団体のものです。日本の報道機関の基準は、読めたページがなく、確認できていません。公式の文章は引用せず、言い換えています。たとえ話、例文、「見立てです。」で始まる段落は、僕らの考えです。

先に結論

読んだ基準から言えることは、次の4つです。

  1. 名前を出さない情報源は、本来は例外です。 SPJは、秘密の約束を「最後の手段」とし、公共の重大な利益があって、危害や報復を受けうる人に限るとしています。ワシントン・ポストも、まず実名での取材を試み、断られたら別の方法を探す、と書いています。
  2. 匿名の情報は、確かめ方が決まっています。 ワシントン・ポストは、匿名の情報源が誰かを編集者が知っていること、できれば独立した2つの情報源で確かめることを望ましいとしています。ただし、読者には、その確認の過程は見えません。
  3. 他社の報道を引く場合は、元を示す決まりがあります。 自分で集めていない事実は、出どころを書く。読者が、自分で見たことと、人づてのことを区別できるようにする、と書かれています。
  4. 確かさは、言葉でなく、中身で決まります。 「関係者」の立場が書かれているか、公式の資料と合うか、で変わります。

見立てです。「関係者によると」は、情報が「確かでない」ことも「確か」なことも意味しないと思います。読む側にできるのは、確かさを測る材料を探すことです。

たとえ話:「隣のクラスの子が言ってた」

僕らのたとえです。公式の文書にあるものではありません。

「次の席替えは来週らしいよ」と、友だちが言ったとします。聞き返したくなるはずです。「誰が言ってたの?」「先生本人から聞いた人?」「ほかの人も同じことを言ってた?」「先生の連絡のプリントはあった?」

先生に直接聞いた子が言うなら、かなり確かです。「隣のクラスの子が言ってた」の、そのまた友だちの話なら、リレーのうちに形が変わっているかもしれません。10人が同じことを言っても、全員が同じ1人から聞いたのなら、確認が10回あったわけではありません。

言葉をほぐす

僕らの整理です。正式な定義ではありません。日本の報道機関が、これらの言葉をどう定めているかは、読んだページには書かれていませんでした。

言葉 ふつうの意味(僕らの整理) 確かめたいこと
関係者によると 情報源が名前を出さない その人は、情報を直接知る立場か。立場は書かれているか
〜と報じられた 他の報道機関が伝えた 元の取材は誰か。引用した側が確かめたのか
公式発表 会社や組織が自分で出した情報 日付、対象、条件。発表と実際に使える日は違うこともある
〜の見通し、〜とみられる 書き手の見立て、または情報源の予想 事実の報告か、推測か

「公式発表」の日付の読み方は、この連載の別の記事で扱っています。

公式な基準は、何を求めているか

匿名の情報源は「最後の手段」

SPJ(米国の職業ジャーナリスト協会)の倫理綱領は、秘密を約束することを「最後の手段」と書いています。対象は、公共の重大な利益がある情報を持ち、危害や報復を受けうる人です。約束する前に、その人の動機を考えること、守ると決めたことを読者に説明することも求めています。

ワシントン・ポストの基準も同じ方向です。匿名は、職を失う、危害を受けるなど、読者の利益が信頼の損失を上回る場合に限ります。個人への匿名の攻撃や、彩りだけの匿名の引用は認めない、とも書いています。

確かめ方:編集者が知る、2つの独立した情報源

ワシントン・ポストは、編集者が匿名の情報源を知っていること、掲載された細部の出どころを、少なくとも1人の編集者が知っていることを求めています。匿名の情報に頼る事実には、独立した2つの情報源を望ましいとし、できれば直接の知識を持つ人、とし、関連する文書が2つ目の情報源の役を果たすこともあると書いています。1つだけで書くときは、編集の責任者らを含む協議を経たうえで、とされています。

IFCNの原則は、ファクトチェックをする組織向けのものです。重要な部分は、名前を出した複数の情報源で確かめること、できるだけ一次の情報源を使うこと、二次の情報に頼ったなら理由を説明すること、を求めています。

他社の報道を引くときの決まり

ワシントン・ポストの基準は、自分で集めていない事実や引用は、完全に出どころを示すと書いています。読者が、記者が自分で見たことと、通信社など他から来たことを区別できるようにする、とあります。現場にいなかったら、そう書き、人づての話は出どころを示す。他社の特ダネは、その社の功績として示す、とも書かれています。

見立てです。これらは、基準を公開している組織の話です。ニュースを読むとき、すべての書き手がこの基準に従っているとは限りません。

AIのニュースで、4つの問いを使う

僕らの作った例です。実在のニュースではありません。「A社が、来月に新しいAIを出すと、関係者が話した。複数の報道が同じ内容を伝えた」という見出しがあったとします。

問い 見るところ 例での確かめ方
誰が言ったのか 「関係者」の立場が書かれているか 「社内の担当者」なのか、「取引先」なのか。書かれていなければ、判断の材料がない
何人が言っているのか 独立した複数か 複数の報道が、同じ1つの元記事を引いていないか
公式の資料はあるか 会社の公式の発表、ブログ、お知らせ まだなければ、「未確認」。出たら、日付と対象を読む
元はどこか 一次の情報までたどれるか 報道の中に、元の記事や資料へのリンクがあるか

公式の資料は、一次の情報です。報道は、それを伝える二次の情報になります。日本ファクトチェックセンターの記事は、検証の過程で、公的機関のデータや公式発表を確認し、報道と照合していると、ページの構成から読み取れました。

COR(Digital Inquiry Group)が教える3つの問いも、近いものです。誰がその情報の背後にいるか、どんな証拠があるか、ほかの情報源は何と言っているか。

読んだ3つの基準を並べる
組織 匿名の情報源 確かめ方 出どころの示し方
SPJ(米国の職業ジャーナリスト協会) 最後の手段。危害や報復を受けうる人に限る。動機を考え、守る判断を説明する 出す前に、情報源の真正さと出どころを確認する。速さは言い訳にならない 読者が信頼性と動機を判断できるよう、情報源を明らかにする。元の情報源を優先
IFCN(国際ファクトチェックネットワーク) 危険がある場合のみ、必要な分だけ伏せ、ほかの詳細は出す 重要な部分は、名前を出した複数の情報源で確かめる 読者が同じ作業をたどれるよう明記。一次を優先し、二次に頼ったら理由を示す
ワシントン・ポスト 実名が強く望ましく、匿名は条件つき。編集者が情報源を知る。なぜ信頼できる情報源かを、読者にできるだけ伝える 独立した2つが望ましい。1つだけなら、編集の責任者らを含む協議が要る 自分で集めていない事実は出どころを示す。自分で見たことと区別する

IFCNの原則は、ファクトチェックの組織が守るものです。一般の報道すべてに当てはまるわけではありません。

誤解されやすい点

「匿名の情報は、うそ」ではない。 SPJやワシントン・ポストの基準は、匿名を認める場合があることを前提にしています。条件を満たしたうえでの、例外です。

「複数のメディアが報じた」は、確実という意味ではない。 元が同じなら、確認は増えていません。独立した情報源かどうかが、ポイントです。

「大手が書いたから確か」でもない。 SPJの綱領は、記事を出す前に情報源の真正さを確かめる責任は書く側にある、と書いています。ただし、読者は、その確認の過程を見られません。だから、公式の資料と合わせて読みます。

「公式がまだ何も言っていない」は、「否定した」ではない。 僕らが読んだ基準は、この点を書いていません。見立てです。「未確認」と置いて、公式の発表を待つのが、安全な読み方だと思います。

今日からできること、やってはいけないこと

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