3行でいうと
- 「重みが公開」と「オープンソース」は別物。ダウンロードできても、何に使ってもよいとは限らない。
- 見る点は、商用利用・再配布・派生モデル・別枠の使用ポリシー・土台の引き継ぎの5つ。
- 日本語モデルの多くは海外モデルが土台で、土台のライセンスが引き継がれる。国産でも条件がゆるいとは限らない。
- この記事は法律の助言ではない。最終確認は、各モデルのライセンス本文で行う。
ローカルAIは、ダウンロードして自分のパソコンで動かせます。ただ、「ダウンロードできる」ことと「何に使ってもいい」ことは、別の話です。この記事では、主なライセンスを出典で確認できた範囲で比べ、初心者が最初に見るべき点をまとめます。
先に断っておきます。この記事は法律の助言ではありません。最終確認は、必ず各モデルのライセンス本文で行ってください。
まず、言葉を分ける
ローカルAIの話では、似た言葉が混ざります。
- 重み(ウェイト):モデルの中身の、大量の数字のファイルです。これが公開されているモデルを「オープンウェイト」と呼びます。
- ライセンス:そのファイルを、どう使ってよいかを決めた契約書のようなものです。
- オープンソース:ここは定義があります。
オープンソースの定義を管理している団体OSI(Open Source Initiative)は、2024年10月28日に「オープンソースAIの定義」の1.0版を出しました。ページによると、次の4つの自由が必要です。
- どんな目的にも、許可なく使える
- 仕組みを調べられる
- どんな目的にも、改変できる
- 改変の有無にかかわらず、共有できる
さらに、訓練データの詳しい情報、訓練と推論のコード、重みと設定の3つが要るとされています。
つまり、重みが公開されているだけでは、この定義を満たすとは限りません。「用途の制限がある」「訓練データの情報がない」といったモデルは、オープンウェイトではあっても、オープンソースAIとは言いにくいわけです。どこまでを「オープン」と呼ぶかは、見立てが分かれる話なので、この記事では、各社の呼び方ではなく、条件そのものを見ていきます。
比べる前に、見る5つの点
ライセンスを読むときは、次の5つを見ます。
- 商用利用:仕事やお金になる使い方ができるか。売上や利用者数の上限がないか
- 再配布:ファイルを他の人に渡してよいか。渡すとき、何を付けるか
- 派生モデル:追加学習(ファインチューニング)や圧縮(量子化)をした版を、公開してよいか。名前や条件に決まりがないか
- 別枠の使用ポリシー:ライセンス本文とは別に、禁止事項の文書がないか
- 土台の引き継ぎ:他のモデルを土台にしている場合、土台の条件がどう及ぶか
7つのライセンスを並べる
次の表は、読めたページに書いてある内容を、短く言い換えたものです。モデルのバージョンによって条文が変わることがあります。表の行は、下の「出典」で読んだ版の話です。
| 名前 | 商用利用 | 再配布 | 主な条件 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| MIT | できる | できる | 著作権表示と許諾文を、コピーに付ける。無保証 | OSIのMITライセンスのページ。例:Sarashinaのモデルカード |
| Apache 2.0 | できる | できる | ライセンスの写しを付ける。変更箇所に印を付ける。NOTICEファイルがあれば引き継ぐ。特許の許諾あり(特許訴訟を起こすとその許諾は終わる)。派生物には別の条件を足してもよい | Apacheのライセンス本文。例:gpt-oss、LLM-jp-4 |
| Llama 3.1 Community License | できる(ただし月間利用者7億人超の組織は、Metaの許可が要る) | できる | ライセンスの写しと「Built with Llama」の表示。派生モデルの名前の頭に「Llama」。Metaの使用ポリシーに従う | Llama 3.1のライセンス(Hugging Face) |
| Gemma利用規約(Gemma 4より前) | できる | できる | 使用制限(禁止用途方針)を受け取る側にも課す。規約の写しを付ける。変更に印を付ける。NOTICEに指定の一文 | Gemma Terms of Use |
| NVIDIA Open Model License | できる(無償・ロイヤリティなし) | できる | 規約の写しと「Licensed by NVIDIA Corporation under the NVIDIA Open Model License」の表示。安全装置の回避で、許諾が自動で終わる | NVIDIA Open Model Licenseのページ |
| PLaMo Community License | 条件つきでできる | 条件つき | 商用はPFNのページでの事前登録が必要。利用者と関連会社の年間売上が10億円を超えないこと。派生モデルの名前に「PLaMo」、表示に「Built with PLaMo」 | PLaMo 2 8Bのモデルカード(Hugging Face) |
| LFM Open License v1.0 | 年間売上1000万ドル未満の企業は、無償でできる。超える場合は有償ライセンス | できる | ライセンスの写しと表示を付ける。変更に印を付ける。守らないと、許諾は自動で終わる | LiquidAIの公式ドキュメント、LFMライセンスのページ |
Gemma 4は、Apache 2.0に切り替わりました。経緯は記事09に書いたので、ここでは繰り返しません。表のGemmaの行は、それより前の版の規約です。
一つずつ、読みどころ
MITとApache 2.0:いちばん読みやすい
MITは短く、条件は「著作権表示を付ける」ことが中心です。Apache 2.0は、もう少し細かく書いてあります。写しを付ける、変更に印を付ける、NOTICEを引き継ぐ。守ることは増えますが、どれも手間は小さいです。
Apache 2.0には、特許の取り扱いも書いてあります。貢献した人は特許の許諾をくれますが、あなたが「このソフトは自分の特許を侵害している」と訴えると、その許諾は終わります。ふつうに使う分には気にしなくて大丈夫ですが、会社で使うなら法務の人が見る点です。
また、Apache 2.0は、派生物に別の条件を足してもよいと読めます。自分で追加学習した版を、自分の条件で出すことが認められる余地がある、ということです。ただし、土台の部分の条件は残ります。
Llama:条件が細かい
Llama 3.1のライセンスは、商用利用を許しています。ただし、月間の利用者が7億人を超える組織は、Metaの許可が要ります。個人や中小企業には関係が薄い条件ですが、この種の「規模による線引き」は、Llamaの特徴です。
再配布のときは、ライセンスの写しを付け、「Built with Llama」を関連サイトや文書に出します。Llamaを使って作ったAIモデルの名前は、頭を「Llama」で始める決まりもあります。
使用ポリシー(Acceptable Use Policy)も、ライセンスに取り込まれています。これに違反する使い方は、ライセンスの範囲外になります。
なお、「Llamaの出力を使って別のモデルを育てる」場合の扱いは、僕の読んだ要約の中で食い違いがありました。ここは、本文で確認してください。
Gemma(旧)とNVIDIA:安全側の条項がある
旧Gemma利用規約は、使ってはいけない用途の方針を、再配布先にも引き継がせる作りでした。出力(モデルが作った文章など)は、派生モデルには当たらず、Googleは出力に権利を主張しない、と書かれています。
NVIDIA Open Model Licenseは、商用利用を許し、派生モデルの所有権も利用者にあると明記しています。一方で、モデルの技術的な制限や安全装置を回避すると、許諾が自動で終わる、という条項があります。NVIDIAの信頼できるAIの方針に従うことなども求められています。
どちらも、「ふつうに使う」だけなら困りません。ただ、安全装置を外したモデルを作って公開したいときなどは、本文を読む必要があります。
PLaMoとLFM:売上で線を引く
国産のPLaMoと、米国のLiquid AIのLFMは、どちらも「売上の規模」で線を引いています。
PLaMo Community Licenseは、PLaMo 2 8Bのモデルカードで確認できました。商用では、PFNの登録ページでの事前登録が要ります。また、利用者と関連会社の年間売上が10億円を超えないことが条件です。派生モデルの名前に「PLaMo」を入れ、「Built with PLaMo」を表示する決まりもあります。責任の上限が500円というのも、本文にあります(直接の損害のみ)。ほかのPLaMoのモデルでは、条件が違う可能性があります。使う版のカードで確認してください。
LFM Open License v1.0は、年間売上が1000万ドル未満の企業なら、無償で商用利用できます。超えると、Liquid AIから商用ライセンスを買う必要があります。非営利団体や研究者には、制限がないと書かれています。この上限は、そのままの版にも、派生モデルにも及びます。ファインチューニングした版を非公開のままにしてもよく、公開の義務(コピーレフト)はありません。
どちらも、個人の趣味や、小さな会社なら、問題になりにくい線です。ただし、会社の規模が大きくなったとき、あとから条件に引っかかることがあります。ここは、見立てです。
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別の「使用ポリシー」に注意
ライセンス本文のほかに、別の文書で使い方の約束がある場合があります。
gpt-oss(OpenAI)は、Apache 2.0で出ています。GitHubのリポジトリには、別に「USAGE_POLICY」というファイルがあります。読めた範囲では、中身は「適用される法律に従うこと」が中心で、細かい禁止事項は書かれていませんでした。Hugging Faceのモデルカードには、使用ポリシーの記載を見つけられませんでした。ライセンスの欄だけを見ていると、見落とす例です。
Llamaは、ライセンス本文の中に、使用ポリシーを取り込んでいます。違反すると、ライセンスの範囲を外れる作りです。
見る場所は、次のとおりです。
- モデルカード(Hugging Faceの説明書き)のライセンス欄
- リポジトリの「LICENSE」ファイルと、「USAGE_POLICY」「NOTICE」などのファイル
- ライセンス本文の中の、「ポリシー」「規約」という言葉
使用ポリシーが「法律に従う」程度のものか、具体的に用途を禁じるものかで、重さが変わります。どちらなのかは、実際に開いて確かめるしかありません。
土台のモデルのライセンスは、引き継がれる
日本語向けのモデルは、海外のモデルに日本語を追加で学習させたものが多くあります。この場合、土台のライセンスが、そのまま残ります。
読めた例を2つ挙げます。
- ELYZA(Llama-3-ELYZA-JP-8B):モデルカードのライセンス欄は、Meta Llama 3 Community Licenseです。土台は、Meta-Llama-3-8B-Instructで、そこに日本語の追加学習と指示チューニングをしたものだと書かれています。
- Swallow(Llama 3.1 Swallow):Metaの「Llama 3.1 license」を引き継ぎ、研究と商用の利用が許されます。さらに、指示チューニング版(instruct)には、Googleの「Gemma Terms of Use」も守る必要がある、とされています。ページの冒頭には「Built with Llama」の表示もあります。
Swallowの例は、1つの派生モデルに、複数の土台の条件が重なることがある、ということを示しています。Swallowには、ほかの土台(たとえばQwen)の版もあります。版ごとに、ライセンスが違います。使う版のページで確認してください。
国産のモデルだから条件がゆるい、ということはありません。記事05で扱ったとおり、中身が何かを見る必要があります。
初心者の見分け方:3つの質問
ここは見立てです。
- 自分は、売上や利用者の線の内側か。(PLaMoは10億円、LFMは1000万ドル、Llamaは7億人。条件が違うので、自分に当てはまる線を探します)
- ファイルを他人に渡すか、公開するか。(個人で動かすだけなら、再配布の条件は気にしなくてよい場面が多いです。渡すなら、写し・表示・名前の決まりを確認します)
- 土台は何か。(モデルカードの「base model」や、ライセンス欄を見ます)
個人で、自分のパソコンで試すだけなら、どのライセンスでも、たいていは問題になりません。気をつけたいのは、仕事で使うとき、サービスに組み込むとき、ファインチューニングした版を公開するときです。ここで、表の「主な条件」を確認します。
気をつけること
- この記事は、僕らが読んだ版の要約です。バージョンが変わると条文も変わります。Llamaは3.1、PLaMoは2 8B、LFMはv1.0を読んでいます。
- 一部のライセンスは、ライセンス本文そのものではなく、公式のドキュメントやモデルカードの要約を元にしています。細かい条件の抜けがありえます。
- Llamaの出力利用の扱いは、読んだ要約の間で食い違いました。そのため、断定していません。
- 日本の法律での解釈(たとえば、著作権や契約の扱い)は、調べていません。
- 繰り返しますが、法律の助言ではありません。最終確認は各モデルのライセンス本文で行ってください。
出典
- Open Source AI Definition 1.0(OSI)
- The MIT License(OSI)
- Apache License, Version 2.0(Apache Software Foundation)
- Llama 3.1 Community License(meta-llama、Hugging Face)
- Gemma Terms of Use(Google AI for Developers)
- NVIDIA Open Model License(NVIDIA)
- pfnet/plamo-2-8b(Hugging Face)
- LFM Open License(Liquid AI)
- Model license(Liquid AI Docs)
- openai/gpt-oss(GitHub)
- gpt-oss USAGE_POLICY(GitHub)
- elyza/Llama-3-ELYZA-JP-8B(Hugging Face)
- Llama 3.1 Swallow(Swallow LLM)
- sbintuitions/sarashina2.2-3b-instruct-v0.1(Hugging Face)
