3行でいうと

  • 事前学習の目的は「次のトークンの予測」。それだけでは、指示に従う、誠実に答える、といった目的とずれる、とInstructGPT論文は述べている。
  • RLHFは、人の手本、人の比較、強化学習の3段階。論文では、1.3Bモデルの出力が175BのGPT-3より好まれた。
  • DPOは、報酬モデルと強化学習を使わず、好みのデータだけで同じ目的を最適化する方法。2026年の各社のモデルカードは、事後学習の細部をほぼ公開していない。

この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は、論文とモデルカード(モデルの説明書)を読んでまとめたものです。論文の数字は、その論文の条件での結果で、今のサービスのAIの性能を表すものではありません。

先に結論

前提:用語

全体の流れ

段階 何を学ぶか 使うデータ(論文での例)
事前学習 並びの続きを当てる。言葉・知識・コードの土台 大量の文章(ウェブなど)
教師あり微調整(SFT) 人が書いた「望ましい答えの手本」をまねる 人が書いた手本。InstructGPTでは約1.3万件のプロンプト
報酬モデルの学習 人が「どちらがよい答えか」を比べた結果から、点数をつける 人の比較。InstructGPTでは約3.3万件のプロンプト
強化学習(PPO) 報酬モデルの点数が高くなる答え方に調整する APIのプロンプト。InstructGPTでは約3.1万件

数字は、InstructGPT論文のSFT、報酬モデル、PPOのデータセットの規模(約13k、33k、31kのプロンプト)です。

事前学習:何を学ぶか

InstructGPT論文は、多くの大きな言語モデルの目的を、「インターネット上のウェブページで、次のトークンを予測すること」と書いています。そして、それは「ユーザーの指示に役立つ形で、安全に従う」という目的とは違い、そのため「言語モデリングの目的は、ずれている(misaligned)」と述べています。つまり、事前学習だけのモデルは、作り話をする、有害な文章を出す、指示に従わない、といったことが起こりえます。

最近のモデルは、どこまで公開しているか

読めた範囲の公式文書は次のとおりです。

事後学習:RLHFの3段階(InstructGPT)

InstructGPT論文(OpenAI、2022年)は、GPT-3を、人の評価を使って調整する方法を示しました。3段階です。

  1. 手本の収集と教師あり学習:雇った作業者(約40人)が、プロンプトに対する望ましい答えを書き、GPT-3をそのデータで微調整。
  2. 比較データと報酬モデル:同じ入力への複数の出力を、作業者が好ましい順に並べ、それをもとに、人が好む答えを予測する報酬モデルを学習。論文では6Bの報酬モデルを使っています。175Bの報酬モデルは、不安定になることがあった、と書かれています。
  3. 強化学習(PPO):報酬モデルの点数を報酬として、手順1のモデルを強化学習で調整。元のモデルから離れすぎないように、トークンごとにKLペナルティ(元のモデルとの差に罰をつける項)を足しています。

論文の主な結果(その論文の条件でのものです)。

強化学習の目的関数(式の読み方)

InstructGPT論文の式(2)の考え方です。

  • 報酬モデルの点数(r)を高くする。
  • 元の教師あり学習のモデルとの違い(KL)に、係数βで罰をかける。報酬モデルの点数だけを追って、おかしな答えに偏るのを防ぐ。
  • PPO-ptxでは、さらに事前学習のデータでの対数尤度(元の言葉の予測能力)の項を、係数γで足す。

式の細かな導出は、この記事では扱いません。

DPO:強化学習を使わない簡略化

DPO(Direct Preference Optimization、Rafailovら、2023年)は、RLHFを「複雑で不安定になることがある」と述べ、報酬モデルを別に作らず、強化学習も使わない方法を示しました。

論文の説明は次のとおりです。

見立てです。DPOは「同じ目的を、手順を減らして達成する」方法だと理解しました。報酬モデルを作る手間や、強化学習の不安定さを避けたい場面で、有力な選択肢になると思います。ただし、論文の実験は6Bまでです。今の巨大なモデルでどれが主流かは、読んだ資料からは分かりません。

人間以外のフィードバックと、検証できる報酬

事後学習の方法は、人の評価だけではありません。

読み方・選び方

見立てです。使う側にとっての意味は、次のようになると思います。

  1. AIの「性格」や「答え方」の多くは、事後学習で作られる。同じ土台でも、事後学習が違えば、断り方や口調、安全の線引きが変わりうる、と読めます。ただし、これはInstructGPT論文の内容(事前学習だけのGPT-3と、調整後の違い)からの推測です。
  2. 好みで学習するので、「作業者や評価者の好み」が反映される。InstructGPT論文自身が、作業者の好みに合わせたものだと述べています。
  3. モデルカードで、事後学習の詳細を知るのは難しい。読んだ3社の最新の文書でも、手法の名前は一部ありますが、データ量や手順、アルゴリズムはほとんど書かれていません。

よくあるつまずき

見立てです。

気をつけること

出典

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