3行でいうと
- OpenAIとGoogle(有料)は、APIの入力を学習に使わないと書いています。ただしどの社も、不正利用の監視のために一定期間は残りえます。
- ZDRは既定ではなく、契約や承認が要ります。さらに、対象の機能が限られ、ファイル保存やバッチなどは対象外の例があります。
- ZDRでも、法令上の必要や、不正利用の疑いで検知された内容は残る場合があります。自分のアプリのログも別に設計が要ります。
この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。この記事は公式の文書を読んでまとめたものです。契約や法令の個別の判断は、専門家に相談してください。
先に結論
- データが残る場所は、大きく3つです。
- API提供元の不正利用監視のログ(既定で残る。期間は会社や条件で違う)
- 機能のために保存される状態(アップロードしたファイル、会話の履歴、ベクトル検索の保管庫など。消すまで残るものがある)
- 自分のアプリ側のログ(提供元の設定では制御できない)
- 「ZDRにすれば何も残らない」は、公式文書を読む限り正確ではありません。対象は契約で決まった一部の機能で、対象外の機能を使えば、その機能の保持の規則に従います。
- 保持期間は、モデルや機能、契約で変わります。数字は「2026年10月23日に読み直したページの記載」です(Google Cloudの不正利用監視ページだけは読み直せず、10月8日に読んだ内容のままです)。
前提:用語を先にそろえる
- APIは、アプリからAIを呼び出す窓口です。チャット画面の利用とは、データの扱いの規約が別です。
- 不正利用の監視ログは、規約違反を見つけるために提供元が保存する記録です。プロンプトや応答を含みうる、と各社が書いています。
- アプリケーションの状態は、機能を成り立たせるために保存されるデータです。OpenAIは「APIの機能が、作業や要求を果たすために保持するデータ」と定義しています。
- ZDR(ゼロデータ保持)は、提供元がお客様の入力と出力を、応答を返したあとに保存しない取り決めです。Anthropicの文書は「応答が返された後、保存時にプロンプトと応答を保存しない」と説明しています。
- データレジデンシーは、データを保存する地域を選べることです。
標準の扱い:各社の公式の記載
| 項目 | OpenAI | Anthropic | |
|---|---|---|---|
| 学習への利用 | APIのデータは、明示的に参加しない限り、モデルの学習や改善に使わない(2023年3月1日以降) | 今回読んだ保持の文書には、学習の記載を確認していません | Gemini APIの有料サービスは、プロンプトと応答を製品の改善に使わない。無料のサービスは使う |
| 標準の保持 | 不正利用の監視ログは最長30日。法令上必要な場合や、サービスや第三者を守るために合理的に必要な場合は、それ以上 | 入出力はバックエンドから受領または生成後30日以内に自動削除。ただし例外あり(下記) | Gemini API(有料)は「限られた期間」ログを取る。日数は読んだ規約に書かれていない |
| 不正利用の疑いで残るもの | 上記のログに含まれうる | 利用ポリシー違反として自動検知された場合、入出力は最長2年、安全分類の点数は最長7年 | Google Cloud側の文書では、疑いが検知された場合のプロンプトのログが最長90日 |
| ZDRの取り方 | 事前の承認と追加要件への同意が必要。営業に問い合わせ | 組織ごとに契約で有効にする。営業に問い合わせ | 不正利用監視の例外の手続きを使う。ほかに機能ごとの設定がある |
出典の日付は、OpenAIの「Your data」ページ、Anthropicのプライバシーセンターと開発者向け文書、Googleの規約(2026年3月23日発効、2026年4月28日更新)とGoogle Cloudの文書です。
無料と有料で扱いが変わる:Gemini API
Googleの規約では、Gemini APIとGoogle AI Studioに「無料(Unpaid)」と「有料(Paid)」の区分があります。無料の場合、送った内容と応答は製品の提供・改善・開発に使われ、品質向上のため人間の確認者が読み、注釈をつけ、処理することがある、と書かれています(Google アカウントやAPIキーなどとは切り離してから)。規約は、無料のサービスに、機密・個人情報を送らないよう求めています。EEA、スイス、英国では、無料のサービスにも有料の規約が適用される、という例外もあります。
有料は、プロンプトと応答を製品の改善に使わず、データ処理の付属書に従う、とされています。ただし、不正利用の検知などのため、一定期間ログを取ります。
Anthropicの例外
Anthropicの「How long do you store my organization's data」には、30日削除の例外が4つあります。Files APIのように保持期間をお客様が決めるサービス、ZDRのような別の合意、利用ポリシーの執行のための保持、法令上の保持です。フィードバック(良い・悪いのボタン、不具合報告)に紐づくデータは5年保持される、とも書かれています。
ZDRで何が変わり、何が残るか
OpenAI
OpenAIは、不正利用の監視ログからお客様の内容を除く制度を2つ用意しています。どちらも事前の承認が要り、組織単位またはプロジェクト単位で選べます。
- Modified Abuse Monitoring(MAM):お客様の内容を、不正利用の監視ログから除く。ただし、画像やファイル入力が、まれに例外になる。
- Zero Data Retention(ZDR):MAMと同じ除外に加え、
/v1/responsesと/v1/chat/completionsのstoreパラメーターが常にfalseとして扱われる。
対象外の機能は、ZDRを有効にしていても、アプリケーションの状態を保存することがあります。文書は「ZDRの対象外とされた機能は、ZDRが有効でも状態を保持しうる」と書いています。さらに、OpenAIは、特定のお客様に対して特定のモデルをZDRの対象外にする権利を、書面での事前通知とともに留保しています。重大なリスクの調査・防止のために必要な場合も同様で、その場合は内容を保持し、人が確認することがある、と書かれています。
OpenAIのエンドポイントごとの保持(公式の表より抜粋)
OpenAIの表は、エンドポイントごとに、学習への利用、不正利用の監視ログ、アプリケーション状態、ZDR対象かを示しています。学習への利用は、全行で「No」です。
| エンドポイント | 監視ログ | アプリケーション状態 | ZDR対象 |
|---|---|---|---|
/v1/responses |
30日 | 既定で30日、またはstore=trueのとき。ZDRでは保存しない |
対象(制限あり) |
/v1/chat/completions |
30日 | なし(音声出力は1時間) | 対象(制限あり) |
/v1/conversations |
削除まで | 削除まで | 対象外 |
/v1/files |
30日 | 削除まで(expires_afterで指定も可) |
対象外 |
/v1/vector_stores |
30日 | 削除まで | 対象外 |
/v1/embeddings |
30日 | なし | 対象 |
/v1/audio/transcriptions |
なし | なし | 対象 |
/v1/batches、/v1/fine_tuning/jobs、/v1/evals |
30日 | 削除まで | 対象外 |
Assistants関連のオブジェクトは、削除してから30日後に消えるとあり、削除しないものは無期限に残る、と書かれています。上の表は一部の行だけを載せています。全体は公式ページで確かめてください。
「ZDR with Private Safety Processing」という選択肢もあります。ZDRの保護を保ったまま自動の安全監視を行う仕組みで、お客様が管理する保存先の設定など、追加の技術的・運用上の要件があると書かれています。僕らは、この仕組みの詳細は読んでいません。
Anthropic
Anthropicの開発者向け文書によると、ZDRは既定ではなく、組織ごとに契約で有効にします。新しい組織は、別に有効にする必要があります。
- 対象:Messages APIとトークン数の計算APIのうち、対象の機能。商用の組織のAPIキーで使うClaude Codeも含まれます。プロンプトキャッシュは対象で、プロンプトと出力は保存されず、キャッシュの表現とハッシュが、有効期間のあいだメモリに置かれて削除される、と書かれています。
- 対象外:Claude Console(プレイグラウンドを含む)、Free・Pro・Maxなどの個人向けプラン、Claude Managed Agents、Files API、バッチ処理、コード実行、MCPコネクタなど。
- 対象外の機能を使っても、使えなくなるわけではありません。文書は、それを「その特定のデータについて、ZDRの取り決めの外に出る選択」であり、その機能の保持の規則が適用されると書いています。たとえば、バッチ処理は29日、コード実行は最長30日、Files APIは削除か期限まで。
- 例外:ZDRやHIPAAの取り決めがあっても、法令上必要な場合や、自動の安全システムに検知された場合は、入出力を最長2年保持しうる、と書かれています。
- 一部のモデル(文書では「Covered Models」。この記事の確認時点の文書では、Claude Fable 5.1などが挙がっています)は、ZDRの対象外で、30日の保持が必要です。対象のモデルは変わりうるので、契約書で確かめてください。
AnthropicのZDRで「対象」「対象外」とされた機能(公式文書より)
対象(Yes):Messages API、トークン数の計算、100万トークンの文脈窓、適応的な思考、ブラウザ操作、引用、コンピューター操作、文脈の編集と圧縮、データレジデンシー、メモリツール、PDF対応、プロンプトキャッシュ、ウェブ検索、ウェブ取得、テキスト編集ツール、Bashツールなど。
条件付き(Yes, qualified):キャッシュの診断、構造化出力。構造化出力は、JSONスキーマだけが最長24時間キャッシュされる、とあります。
対象外(No):エージェントスキル、バッチ処理、Claude Managed Agents、コード実行、Files API、MCPコネクタ、MCPトンネル(研究プレビュー)、プログラムによるツール呼び出し。
ウェブ取得は対象ですが、取得先のサイトの運営者が、リクエストのデータを自分の規則で保持することがある、と書かれています。
契約の内容によって、どの機能が対象かは異なりうる、と文書は書いており、最新の対象は契約書か担当者に確かめるよう案内しています。
Google CloudのZDRの文書(Gemini Enterprise Agent Platformのページ。URLにはvertex-aiが残っています)は、ZDRを一言で定義せず、データを一定期間保持しうる領域ごとに、お客様がすることを並べています。
- 不正利用監視のプロンプトログ:対象は、Google Cloud Platformの利用規約が適用されるお客様。ZDRを望むなら、Google Cloudの不正利用監視の文書にある例外の手続きを使う(この手順は、10月23日には本文を読み直せていません)。Google Cloudの別の文書は、疑いの検知があった場合のログが最長90日、地域は指定した地域内、とあります。Google Cloudの基本契約(Master Agreement)の顧客は、既定でこのログの対象外、とも書かれています。
- 「Advanced AI」のモデルや機能には、追加のプロンプトと応答のログが付きうる、と書かれています(「Advanced AI Safety Addendum」という別の文書に基づく)。一部の機能では、ZDRができない可能性があります。保持の日数はZDRのページにはなく、そのAddendumに「最長30日」(プロンプトと出力を保存し、自動の道具か、必要に応じて人が確認する)とあります。
- リクエスト・レスポンスのログ:既定は無効。有効にしないこと。
- Interactions API:
storeの既定がtrueなので、store = falseを明示する。 - Live APIのセッション再開:最長24時間の保持になるので、有効にしない。
- インメモリのキャッシュ:保存先はメモリのみ、24時間のTTL、プロジェクト単位。プロジェクトごとに無効化もできます。文書は、キャッシュがZDRに反するわけではない、と書いています。
ZDRと両立しないものも書かれています。Grounding with Google Search(検索で根拠づけする機能)は、最長3日のログが残り、保存を止められない。Grounding with Google Mapsは30日で、止められない。Deep Researchエージェントのセッションは7日で、止められない。
Googleは、お客様の許可や指示なしに、データでモデルを学習・微調整しないと書いています(この文書が扱う管理されたモデル全般)。
自分のアプリのログと運用
見立てです。提供元のZDRを取っても、自分のアプリのログは別に残ります。AIを組み込んだアプリで、次を決めておくと事故が減ると思います。
- 何をログに残すか:入力の全文を残すと、そのログ自体が個人情報の保管庫になる。必要なら、識別子と長さ、モデル名、処理時間などに絞る。
- 保持期間と消し方:期限を決め、自動で消す。バックアップにも及ぶかを確かめる。
- 送る前に削る:氏名、連絡先、番号などを、AIへ送る前に伏せる処理を入れる。伏せたものを戻す対応表は、AIに渡さない。
- 保存される機能を意識する:ファイルのアップロード、会話の保存、ベクトル検索は、提供元側に残る。使うなら、削除の手順(消す呼び出し)を実装する。上の表のとおり、削除しないと残り続けるものがある。
- 契約と設定を確かめる:ZDRや地域の選択は、画面の設定でなく契約で決まるものがある。担当者に確かめ、文書に残す。
- 利用者への説明:何を誰に送るのか、プライバシーポリシーに合わせる。個人情報の取り扱いに関わる法令の扱いは、専門家に確認してください。
よくある失敗・つまずき
見立てです。公式文書の書き方から、起きやすいと思う点を挙げます。
- 「ZDR契約がある」ことを「全機能で何も残らない」と理解する。対象外の機能(ファイル、バッチ、コード実行など)を使うと、その機能の保持が適用されます。
- 試験の画面(プレイグラウンドなど)で本番のデータを使う。AnthropicのZDRはConsoleのプレイグラウンドを対象外としています。
- 無料のGemini APIの枠で、社内データや個人情報を試す。
- 会話や状態を保存する機能の「削除」を実装しない。
- 地域指定(データレジデンシー)を、ZDRと同じものと考える。OpenAIの文書は、データレジデンシーの対象外にアカウント情報や利用状況のようなシステムのデータを挙げています。保存地域の話と、保持の話は別です。
- 提供元のモデル名や機能を切り替えたときに、保持の条件が変わることを確かめない。OpenAIもAnthropicも、特定のモデルをZDRの対象外にする規定を書いています。
気をつけること
- この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。公式の文書を読んでまとめたものです。
- 保持期間やZDRの対象は、変わることがあります。数字は2026年10月23日に読み直したページの記載で、OpenAIのページには、データレジデンシーの対象モデルや一部のAPIの終了日など、日付つきの記載があり、更新が続いています。
- OpenAIのデータレジデンシーについて、地域ごとの対応状況は読み切れておらず、確認できていません。
- AnthropicのZDRページのFAQは、本文が抽出されておらず、確認できていません。自分の組織がZDRかどうかの確認方法は、別のプライバシー文書に「Settings > Privacy Controls > Data retention period」の案内がありましたが、画面は更新されることがあります。
- Google Cloudの「Abuse monitoring」ページは、10月23日の取得では本文が抽出されず、読み直せていません。疑いが検知された場合の最長90日などの記載は、10月8日に読んだ内容のままです。また、「Advanced AI」のモデルの最長30日は、10月23日に読み直したZDRのページには日数がなく、そのページがリンクする別の文書「Advanced AI Safety Addendum」に書かれていました。こちらの文書は、契約の付属書の形で、適用の範囲が案件ごとに決まります。自分の契約でどうなるかは、契約書か担当者で確かめてください。
- Googleは、Gemini API(AI Studio系)の規約と、Google Cloud側の文書で扱いが分かれています。この記事は両方を読みましたが、同じ表にまとめた箇所は、製品が違うことに注意してください。「限られた期間」の日数は、Gemini APIの規約に書かれていませんでした。
- 各社の比較で優劣は述べていません。契約の種類(個人向け、チーム向け、企業向け)や製品によって、規約が違います。
- 個人情報や秘密情報を外部のAIに送る際の法令上の扱い、契約条項の解釈は、この記事の範囲外です。条文や契約の個別の判断は、法務や専門家に相談してください。
出典
- Data controls in the OpenAI platform(OpenAI API、OpenAI、2026年10月23日確認)
- How long do you store my organization's data?(Claude Privacy Center、Anthropic、2026年10月23日確認)
- I have a zero data retention agreement with Anthropic. What products does it apply to?(Claude Privacy Center、Anthropic、2026年10月23日確認)
- API and data retention(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月23日確認)
- Gemini API Additional Terms of Service(Google AI for Developers、Google、2026年4月28日更新、2026年10月23日確認)
- Gemini Enterprise Agent Platform and zero data retention(Google Cloud、Google、2026年10月23日確認)
- Abuse monitoring(Google Cloud、Google、2026年10月8日確認)
- Advanced AI Safety Addendum(Google Cloud、Google、2026年10月23日確認)
更新履歴
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2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
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2026年10月23日 公式の資料を読み直して、次の点を直しました。
- 前:「Advanced AI」のモデルは、すべてのプロンプトと応答が最長30日記録される → いま:追加のログが付くことがあり、最長30日という日数は別の文書(Advanced AI Safety Addendum)に書かれている
- 前:「Advanced AI」の一部の機能では、記録を断れないかもしれない → いま:一部の機能では、ZDR(データを保存しない契約)ができないかもしれない
- 前:Googleの不正利用監視のログをやめたいときは、例外を申請する → いま:Google Cloudの文書にある、例外の手続きを使う
- 前:保持期間の数字は10月8日に読んだページの記載 → いま:10月23日に読み直したページの記載(Googleの不正利用監視ページだけは10月8日のまま)
- 前:Googleの不正利用監視ページを読み直せなかったという注意はなかった → いま:読み直せなかったことと、90日などの記載が前のままであることを書いた
- 一部の出典は読めなかったため、その部分は前のままです。
