3行でいうと
- LLMは、ここまでの文章の続きを予想して書く仕組みです。スマホの次の単語の候補を、とても大きくしたようなものです。
- 文章をトークンという小さな単位に切り、次に来そうなものの確率を出して、ひとつずつ選んで書いていきます。
- 検索して引用しているのではなく、学んだ癖から文章を作ります。ある時点より先の情報は持っていません。
- なめらかで自信ありげな文章でも、正しいとは限りません。数字、日付、人名は元の資料で確かめます。
この記事は公式・一次資料を読んでまとめたものです。この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません。
先に結論
- LLMは、たくさんの文章で訓練された言語モデルです。Anthropic(Claudeの会社)の用語集は、パラメータ(モデルの中にある調整用の数値)が多く、文章の生成、質問への回答、要約など、いろいろな仕事ができるモデルと説明しています。
- 中心にあるのは「次の言葉の予想」です。Googleの教材は、LLMを「本質的にオートコンプリート(入力の続きを補う機能)の仕組み」と説明しています。
- だから、もっともらしいのに間違った文章を作ることがあります。OpenAIは、これを「ハルシネーション(もっともらしいが事実でない文)」と呼んで、理由を説明する文書を出しています。
たとえ話:膨大な本を読んだ「続きを書く名人」
スマートフォンで文字を打つと、次の単語の候補が出ます。あの機能を、とてつもなく大きくしたものを想像してください。
ある人が、図書館の本を何十万冊も読みました。「吾輩は猫で」と書かれたら、続きは「ある」だろう、と分かる。そのくらい、言葉の並び方の癖を覚えています。この人に「この文の続きを書いてください」と頼むと、癖から見て自然な言葉を、ひとつずつ選んで書いていきます。
LLMは、この「続きを書く名人」に近い存在です。ただし、たとえ話なので、実際の中身は人間とは違います。名人は、本を手元に置いて引いているのではありません。読んだ結果として身についた癖で書いています。この点は、あとで大事になります。
仕組みを、順番に
1. 文章を「トークン」に切る
AIは文章を、トークンという小さな単位に切って扱います。Anthropicの用語集では、トークンは言語モデルの最小の単位で、単語、単語の一部、文字、バイトのどれにも当たりうると書かれています。詳しくは別の記事(トークンとは何か)にまとめます。
2. 「次のトークン」を予想する
Googleの機械学習の教材は、言語モデルを「ある並びの中で、トークンやトークンの並びが出る確からしさを見積もるもの」と定義しています。つまり、ここまでの文を見て、「次に来そうなもの」の確率を出します。
3. 前の部分をよく見る(Transformer)
今のLLMの多くは、Googleの教材で「Transformer(トランスフォーマー)」と呼ばれる設計を土台にしています。その中心の考え方が「自己注意(セルフアテンション)」で、教材は、ひとつのトークンを理解するとき、ほかのトークンがどれだけ影響するかを見る仕組みと説明しています。たとえば「それ」が「動物」を指すのか「道」を指すのかを、前後の言葉から判断するのに役立つ、という例が載っています。
文章を書くとき(デコーダー型)は、すでに書いた分だけを見て、次のトークンを作ります。それを繰り返して、文章ができあがります。
4. 訓練は2段階のイメージ
- 事前学習:大量の文章で、続きの予想を練習する段階です。Anthropicの用語集は、この段階では、そのままでは質問に答えたり指示に従ったりするのが得意とは限らない、と書いています。
- 追加の訓練(ファインチューニングなど):すでに学んだモデルに、別のデータでさらに訓練する段階です。Googleの教材は、これでモデルの実用性が引き出される、と説明しています。
実際に各社がどんな手順でチャット用のAIに仕上げているかの細部は、この記事では確かめていません。
5. 「ばらつき」を決める設定がある
Anthropicの用語集によれば、temperature(温度)という設定で、予想のばらつきを変えられます。高いと多様で創造的に、低いと保守的で決まりきった答えになります。同じ文書は、温度を0にしても、結果が完全に同じになるとは限らないと書いています。同じ質問をしても、毎回答えが少し違うことがあるのは、この仕組みのためです。
「LLM」と「チャットのAI」は、同じものか
少し違います。LLMは、文章を作る「エンジン」にあたるものです。ChatGPTやClaudeのようなチャットの画面は、そのエンジンを使ったサービスです。
Anthropicの公式のモデル一覧では、「Claude Sonnet 5.5」「Claude Haiku 5.5」のように、モデルごとに名前があり、開発者が使うときの呼び名(API上の名前、たとえば claude-sonnet-5-5)も決まっています。同じ会社でも、モデルによって、一度に扱える量や料金が違います(2026年10月8日確認)。「Claude」という名前だけでは、どのモデルの話か分からないことがあります。
実際の使い道
公式の説明で挙がっているのは、文章の生成、質問への回答、要約です。Anthropicの用語集がそう書いています。ほかに、Googleの教材には、指示文に例を入れて出力を変える方法(プロンプトエンジニアリング)が出てきます。例を何も入れない「ゼロショット」と、複数の例を入れる「フューショット」があります。この方法ではモデルの中身(パラメータ)は変わりません。
見立てです。「続きを自然に書く」ことが得意なら、文章の下書き、言い換え、要約、翻訳のように、言葉の形を整える仕事と相性がよいはずです。一方で、事実の確認や計算の正確さが命の仕事は、人の目で確かめる前提で使うのが安全だと思います。
誤解されやすい点
検索して答えているわけではない
LLMの答えは、学んだ癖から生成された文章です。ネットを検索して引用しているのとは違います。資料を調べてから答える仕組みを組み合わせた製品もあります(RAGと呼ばれる方法で、別の記事で扱います)。ただし、個々の製品がどう組み合わせているかは、この記事では確かめていません。
最新のことは知らない
AWSの解説は、LLMは、ある時点までのデータで訓練されていて、そこから先の情報はないと書いています。Anthropicのヘルプも、モデルには「知識の期限(ナレッジカットオフ)」があり、それ以降の出来事には正確な情報がないかもしれない、と警告しています。たとえばAnthropicの公式ページでは、Claude Sonnet 5.5、Haiku 5.5、Opus 5.5、Fable 5.1の知識の期限が2026年6月と書かれています(2026年10月8日確認)。
なぜ間違うのか
OpenAIは2025年9月5日の文書で、ハルシネーションを「もっともらしいが事実でない文」と呼んでいます。理由として、次の2つを挙げています。
- 事前学習で見るのは、流ちょうな文章の例ばかりです。「これは正しい、これは間違い」というラベルは付いていません。つづりのような規則的なものは大きくするほど上手になりますが、まれにしか出てこない事実(たとえばある人の誕生日)は、パターンから推測できません。
- 採点のしかたが、当てずっぽうに有利です。正解率だけで点を付けると、「分かりません」と答えるより、推測して答えるほうが点が高くなります。
Googleの用語集は、ハルシネーションと同じ意味で「作話(confabulation)」という言葉を紹介しています。
「賢い」と「正しい」は別
見立てです。文章がなめらかで自信ありげだと、中身も正しいと感じてしまいます。でも、仕組みからすると、なめらかさと正しさは別のものです。数字、日付、人名、法律や薬の話は、元の資料で確かめてください。
気をつけること
- この記事は公式・一次資料の要約で、仕組みの説明は大まかなものです。実際のモデルの設計や訓練の詳細は、各社で異なり、公開されていない部分もあります。
- 「Transformerを使っている」という説明は、Googleの教材に基づいています。個々の製品(ChatGPT、Claudeなど)が内部でどんな設計を使っているかは、この記事では確かめていません。
- モデル名と知識の期限は変わりやすいです。2026年10月8日に確認した時点の表記です。
- たとえ話は、わかりやすくするための単純化です。LLMが人間のように「理解」しているのかは、この記事では判断していません。
- AIの答えは間違うことがあります。重要なことは、自分の目で元の資料を確かめてください。
出典
- Glossary(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月8日確認)
- Large language models(Machine Learning Crash Course、Google for Developers、2026年10月8日確認)
- What's a Large Language Model?(同、2026年10月8日確認)
- Fine-tuning, distillation, and prompt engineering(同、2026年10月8日確認)
- Machine Learning Glossary: Language Evaluation(Google for Developers、2026年10月8日確認)
- Why language models hallucinate(OpenAI、2025年9月5日公開、2026年10月8日確認)
- What is RAG?(Amazon Web Services、2026年10月8日確認)
- How up-to-date is Claude's training data?(Claude Help Center、Anthropic、2026年10月8日確認)
- Models overview(Claude Platform Docs、Anthropic、2026年10月8日確認)
更新履歴
- 2026年10月25日 書き方を直しました。
- 前:運営者が使っていないと読める書き方 → いま:「この記事は、実際に使って確かめた記録ではありません」。公式の資料を読んでまとめた記事で、使い心地は書いていない、という意味に直した
