3行でいうと
- 記憶の土台は、覚える意志・繰り返しの回数・感情の結びつけである。
- 映像やストーリー、場所法、ゴロ合わせで情報を覚えやすい形に変える。
- インプットより、書き出しや説明などのアウトプットが定着を助ける。
- 睡眠や仮眠、時間帯、休憩の取り方など体調管理も含めて工夫する。
向いている人
受験や資格試験の勉強をしている人、学び方を見直したい社会人に向きます。予備知識なしで読めます。
読む意味
記憶術の具体的な手順と、学習の時間の使い方が一冊でわかります。気合いに頼る勉強から、仕組みで進める勉強へ考え方を切り替える手がかりになります。
どんな本か
日本記憶力選手権で優勝し、世界記憶力グランドマスターの称号をもつ著者が、根性や気合いに頼らず、脳が本来もつ性質に逆らわずに学ぶ方法を解説した本です。記憶は生まれつきの才能や年齢で決まるものではなく、正しい技術で誰でも伸ばせるという立場をとります。
中心になるのは記憶の技術です。覚えたい情報を具体的な映像や物語に変える方法、数字とカナのゴロ合わせ、自宅など馴染みのある空間に情報を置いていく空間記憶法(記憶の宮殿の応用)、音読や香りなど複数の感覚を動員する工夫が紹介されます。学習の進め方としては、長時間の勉強より短時間の学習を日を分けて高速で繰り返す「3サイクル反復速習法」を提案します。また、読むだけでなく、思い出せなくても手を止めず1分間書き続ける「1分間ライティング」や、連想を線でつなぐ「1分間マッピング」など、アウトプットで抜けを見つける手法を示します。
さらに本書は、学習内容を整理して定着させるため睡眠が大切であり、短い仮眠が役立つとする研究に触れます。起床後の時間帯や午後の夕食前に集中しやすいこと、15分学習と5分休憩の繰り返し、試験本番に近い心拍数で練習する方法なども述べます。著者は詰め込み教育を頭ごなしに否定せず、記憶の技術で知識を蓄えた先に考える力が育つという立場です。
中身の柱
- 記憶力向上の3つの基礎(意志・回数・感情)。
- 視覚化・ストーリー化、ゴロ合わせ、空間記憶法、多感覚の活用。
- 3サイクル反復速習法と、分散学習の考え方。
- 1分間ライティングなど、アウトプット中心の学習。
- 睡眠・仮眠、集中しやすい時間帯、準備運動など体調と時間の管理。
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概要
「日本記憶力選手権」で優勝経験を持ち、世界記憶力グランドマスターの称号を持つ著者が、根性や気合いに頼るのではなく、脳が本来持っている性質を理解し、それに逆らわずに「脳にまかせる」形で効率よく学習するための具体的な方法を解説した一冊。記憶は生まれ持った才能や年齢に左右されるものではなく、正しい「技術」によって誰でも向上させられるという立場に立ち、記憶のメカニズムを踏まえた勉強法を、実践しやすい形で提示している。
本の構成
なぜ従来の根性論的な勉強法が非効率なのかという問題提起から始まり、記憶が定着する脳のメカニズム、効率的なインプットとアウトプットの方法、そして記憶を長期的に保持するための復習の仕組みへと展開する構成になっている。記憶術の具体的なテクニックの紹介にとどまらず、集中力を引き出すための時間帯の使い方や体調管理、さらには「詰め込み教育」や試験制度そのものをどう捉えるかという教育観にまで議論が及んでいる。
主要な内容(詳述)
- 記憶力向上の3つの基礎: 記憶力を高めるための土台として、覚えようとする「意志」を持つこと、繰り返しの「回数」をこなすこと、そして情報に「感情」を結びつけることの3つを基礎的な要件として位置づける。
- 脳の仕組みに逆らわない: 長時間机に向かい続けるような気合いに頼った勉強法ではなく、脳が情報をどのように処理し記憶として定着させるかという性質を理解したうえで、その性質に沿った形で学習を設計することの重要性を説く。
- 視覚化・ストーリー化とゴロ合わせ: 覚えたい情報をそのまま暗記しようとするのではなく、具体的な映像やエピソードに変換し、物語(ストーリー)として記憶する技法を紹介する。加えて、数字とカナを組み合わせたゴロ合わせを用いて、無味乾燥な事実(歴代大統領の名前や年号など)を覚えやすい語呂に変換する具体的な方法も示される。
- 空間記憶法(記憶の宮殿の応用): 自分の自宅など、日頃から馴染みのある空間の間取りをイメージし、部屋の各所に覚えたい情報を配置していくことで、後から空間を思い浮かべるだけで情報を芋づる式に思い出せるようにする、いわゆる「記憶の宮殿(場所法)」の考え方を、身近な自宅を使う形にアレンジして紹介する。
- 多感覚の統合: 視覚的なイメージ化だけでなく、音読による聴覚の活用、ローズマリーなど特定の香りを嗅覚の手がかりとして利用すること、体を動かしながら覚える体感覚の活用など、複数の感覚を同時に動員することで記憶の定着率を高める工夫を紹介する。
- 3サイクル反復速習法: 1850年1月24日プロイセン王国バルメン生まれで、1867年にボン大学に入学し1873年に哲学の博士号を取得、ハレ大学・ベルリン大学で博士研究を重ねた後、ベルリン大学にドイツで3番目の心理学実験室を創設して1885年に同大学教授となり、1894年にブレスラウ大学、1904年にハレ大学に移ったドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが、無意味綴りを用いた自己実験に基づき1885年の著書『記憶について』で示した「忘却曲線」の知見を踏まえ、一度に長時間(例えば4時間)勉強するよりも、短時間(1時間)の学習を複数日に分けて繰り返す方が記憶の定着に効果的だとする「分散学習」の考え方を、学習範囲を絞り込んで高速で何度も繰り返す独自の反復法として提示する。
- アウトプット中心の学習(1分間ライティング・1分間マッピング): インプット(読む・聞く)だけでは記憶の定着率が低く、実際に問題を解いたり人に説明したりするアウトプットを通じて情報を使うことで、記憶がより強固に定着するとする。具体的な手法として、思い出せない部分があっても手を止めずに1分間書き続ける「1分間ライティング」や、あるキーワードから連想される言葉を1分間でできるだけ多く書き出し線でつないでいく「1分間マッピング」を紹介し、いずれも自分の理解や記憶の抜け漏れを可視化する手段として活用する。
- 睡眠・仮眠と記憶の定着: 学習した内容は、睡眠中に脳内で整理され長期記憶として定着していく過程があるため、詰め込み型の徹夜学習よりも、学習後に十分な睡眠を取ることの方が記憶の定着に効果的であるとする。また15〜30分程度の短い仮眠を取ることで記憶力が大きく向上するという研究に触れ、仮眠前にカフェインを摂取しておくと目覚めるタイミングでちょうど効果が現れ、覚醒の質がさらに高まるという工夫も紹介している。
- 集中力を引き出す時間帯と体調管理: 起床後の2時間や、午後4時から夕食前までの時間帯が、脳が高いパフォーマンスを発揮しやすい時間帯であるとし、学習内容の性質に応じてこうした時間帯を活用することを勧める。また15分の学習と5分の休憩を1セットとして繰り返すことで集中力を維持する方法、試験本番に近い心拍数の状態(踏み台昇降運動などで意図的に心拍数を上げた状態)で練習しておくことで本番の緊張に対応しやすくする「心拍数トレーニング」、水分補給には水を選び空腹時にはナッツ類のように血糖値が緩やかに上昇する食品を摂ることなど、身体的なコンディションを整える工夫にも触れる。
- 脳の準備運動: 本格的な学習に入る前に、百マス計算や英語での九九の暗唱といった簡単で負荷の軽い作業を行うことで、脳を活性化させ学習モードに入りやすくする「脳のウォーミングアップ」の手法を紹介する。
具体例
著者自身が記憶力選手権で用いてきた、情報をイメージや物語に変換して記憶する技法や、数字とカナのゴロ合わせを組み合わせて歴代アメリカ大統領の名前を覚える具体例、学習した内容をすぐに人に説明する、あるいは自分で問題を作って解くといった具体的なアウトプットの方法が、実践例として紹介されている。また、15〜30分の仮眠によって記憶力が大きく向上したとする研究や、踏み台昇降運動によって試験本番に近い心拍数を再現しながら学習する具体的なトレーニング方法も、実例として挙げられている。
実践への応用
新しい知識をインプットしたら、できるだけ早く自分の言葉で説明したり問題形式にして解いたりするアウトプットの機会を作ること、学習内容を無味乾燥な情報のままにせず、具体的なイメージやストーリーと結びつけて覚えること、詰め込みではなく十分な睡眠や短い仮眠を確保して記憶の定着を助けることなどが、実践への応用として挙げられる。加えて、1時間の学習を複数日に分散させる反復法を取り入れること、15分学習・5分休憩のリズムで集中力を維持すること、学習を始める前に簡単な準備運動的な作業で脳を温めること、試験本番を想定した心拍数の状態で練習しておくことなど、時間管理や体調管理も含めた総合的な工夫が示されている。
位置づけ・評価
記憶力選手権の実践知と脳科学の知見を組み合わせた実用的な学習法書として、受験生や資格試験の学習者を中心に広く読まれている一冊として位置づけられている。著者は「詰め込み教育」を頭ごなしに否定するのではなく、効率的な記憶技術を身につけたうえでこそ知識が蓄積され、その先に「考える力」が養われるという立場を取っており、試験制度についても単なる知識量の測定にとどまらず、意志力や集中力といった総合的な人間力を映し出す仕組みとして肯定的に捉えている点に、他の勉強法本とは異なる独自の視点がある。